国内

東京新聞論説副主幹 「子孫に借金を残すな」論バカバカしい

 消費税の引き上げについて新聞各紙では増税賛成派から「子孫に借金を残すな」という論調がでてきた。こうしたロジックの欺瞞を東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏が解説する。

 * * *
 消費税引き上げ法案が衆院を通過し、いよいよ増税が本当の話になりそうだ。マスコミも増税賛成派と反対派にくっきり分かれている。ちなみに東京新聞は反対派である。

 増税応援団がよく持ち出す話の一つに「子孫に借金を残すな」論がある。最近も毎日新聞が社説で「子や孫に借金回さない」という見出しを掲げて、次のように主張した。

「民主党が政権を取って3年、以前にも増して借金は増え続けている。(中略)このままでは膨大な借金を子どもたちの世代に回すことになる。ただでさえ少子化で次世代の人口は減り続け、さらに若年者を労働市場からも締め出していたのでは、社会は破綻する」(7月2日付)

 これは一見、もっともらしい。この際、根本に立ち返って考えてみよう。

 そもそも子供に国の借金を残すのは悪いことか。人生90年として、いまの世代が将来の子供世代に国の借金を残さないとしたら、これから最長90年で国の借金をぜんぶ返済しなければならない。これは好ましいか。

 そんなことを本気で実現しようとすれば、とんでもない大増税と歳出カットが必要になる。あっという間に恐慌状態になって、子育てどころか日々の暮らしも困るようになるだろう。まったく、ばかばかしい。

 前にも書いたが、人生はだいたい90年で終わるが国は永遠に続く。サラリーマンは必ず住宅ローンを返済しなければならないが、死なない国家は借金をぜんぶ返済する必要はない。言い換えれば、いつの時点でも子供はみんな国の借金を背負っている。これが普通の状態である。「子供に借金」論は、有限の個人と無限の国を同列に扱った目くらましの議論なのだ。

※週刊ポスト2012年7月20・27日号

関連キーワード

トピックス

イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
川崎春花
【トリプルボギー不倫の余波】日本女子プロ2022年覇者の川崎春花が予選落ち 不倫騒動後は調子が上向かず、今季はトップ10入り1試合のみ「マイナスばかりの関係だった」の評価も
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
「中野駅前大盆踊り大会」前夜祭でのイベント「ピンク盆踊り
《中野区長が「ピンク盆踊り」に抗議》「マジックミラー号」の前で記念撮影する…“過激”イベントの一部始終
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
『東宝シンデレラ』オーディション出身者の魅力を山田美保子さんが語ります
《第1回グランプリは沢口靖子》浜辺美波、上白石姉妹、長澤まさみ…輝き続ける『東宝シンデレラ』オーディション出身者たちは「強さも兼ね備えている」
女性セブン
9月6日から8日の3日間、新潟県に滞在された愛子さま(写真は9月11日、秋篠宮妃紀子さまにお祝いのあいさつをするため、秋篠宮邸のある赤坂御用地に入られる様子・時事通信フォト)
《ますます雅子さまに似て…》愛子さま「あえて眉山を作らずハの字に落ちる眉」「頬の高い位置にピンクのチーク」専門家が単独公務でのメイクを絶賛 気品漂う“大人の横顔”
NEWSポストセブン
川崎市に住む岡崎彩咲陽さん(当時20)の遺体が、元交際相手の白井秀征被告(28)の自宅から見つかってからおよそ4か月
「骨盤とか、遺骨がまだ全部見つかっていないの」岡崎彩咲陽さんの親族が語った “冷めることのない怒り”「(警察は)遺族の質問に一切答えなかった」【川崎ストーカー殺人】
NEWSポストセブン
シーズンオフをゆったりと過ごすはずの別荘は訴訟騒動となっている(時事通信フォト)
《真美子さんとの屋外プール時間も》大谷翔平のハワイ別荘騒動で…失われ続ける愛妻との「思い出の場所」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン
海外から違法サプリメントを持ち込んだ疑いにかけられている新浪剛史氏(時事通信フォト)
《新浪剛史氏は潔白を主張》 “違法サプリ”送った「知人女性」の素性「国民的女優も通うマッサージ店を経営」「水素水コラムを40回近く連載」 警察は捜査を継続中
NEWSポストセブン
川崎春花
【トリプルボギー不倫の余波】日本女子プロ2022年覇者の川崎春花が予選落ち 不倫騒動後は調子が上向かず、今季はトップ10入り1試合のみ「マイナスばかりの関係だった」の評価も
NEWSポストセブン