ライフ

年間50万足売れた高機能紳士靴 今年の目玉は節電で靴底に穴

 10万足売れればヒットと言われる靴業界で、昨年、50万足を売り上げた高機能ビジネスシューズがある。チヨダの「ハイドロテックシリーズ」だ。「靴底に穴」で通気性を工夫した開発の裏側を、作家で五感生活研究所の山下柚実氏が報告する。

 * * *
 穴が開いている靴。でも、まちがいなく新品。そう聞いて、あなたはどんな靴を想像するだろう? 見かけは何の変哲もない革のビジネスシューズだ。ところが、ひっくり返せば息をのむ。底に通気口のような穴が7つも開いているのだ。

 商品説明には堂々とこうあった。「雨の日や濡れた場所での使用の際は、靴底から水が浸入する可能性があります」雨天には履けない、と宣言する靴。こんなのあり?

 10万足売れればヒットと言われる靴業界で、快適さを追求した高機能ビジネスシューズが人気を集めている。チヨダの「ハイドロテックシリーズ」は年間50万足(2011年)を売り上げた人気商品。その中でも、この夏の目玉商品が、節電需要に対応した『涼風爽快』だ。

 靴底に穴を開け通気性を持たせることに特化した、というこの商品、昨年数種類を市場に出したところ大評判に。それを受けて今年は大幅に種類を拡充し、ビジネスシューズ、カジュアル、サンダルのラインナップ計16種類が揃った。クールビズ商戦に向かって6万足の売り上げを見込んでいる、という。

 男の足は困りもの。一日にコップ一杯もの汗をかく。営業でもデスクワークでも、一日中、靴を履きっぱなし。それなのに女性の足もとと比べて、開口部がぐんと少ないからムレる。この季節には匂いも水虫も気になる……。

 こうした問題を解決するため、『涼風爽快』は靴底に穴を7つ、中敷きにも小さな穴を無数に開けた。ここから空気が出入りして、足のムレを解消してくれるらしい。

 中敷きをとりはずした状態で、もう一度、その不思議な靴底を観察してみよう。ビジネス用は7つの通気口のうち、4つは雪の結晶のような独特な八角形模様をしている。

「穴を開けることで通気性を高めつつ、強度が落ちないように配慮し、小石やゴミがはさまらないための独自の形状を追求して試行錯誤を繰り返しました」と同社マーケティング本部の竹島昌芳氏(40)。通気口をのぞき込むと、中に網戸のようなメッシュ構造が。インタビューをしている竹島さんの顔がむこうに透けて見えてびっくり。

 これならたしかに通気性はバツグンだけれど、雨では……。

「はい、私どもが店頭でいろいろとご説明するその前に、お客さまの方から『雨の日はとても履けないよねー』とおっしゃってくださいます。手にとれば、形状からダイレクトに商品特性が伝わる。だからむしろ、自信をもって『涼しさ』についてお話しできるというわけです」

 おまけに、傘マークに赤い斜線が引かれた「雨天使用不可」を表わすタグも付いていて、これがまた目立つのだ。「普通だと、デメリット表示をここまで大きくしないですよね」と竹島氏も苦笑い。

「でも、雨の日は濡れる、という欠点を真正面から表示することで、むしろよい結果が生まれました。あわせて、同じハイドロテックシリーズにある防水シューズをお勧めするチャンスができたのです。『雨対策に、もう一足いかがですか』と二足一緒にアピールできます」

 マイナスが生んだプラス。怪我の功名。瓢箪から駒。ビジネスシューズも、用途によって履き分ける時代が到来したのだ。

※SAPIO2012年8月1・8日号

トピックス

二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
4月3日にデビュー40周年を迎えた荻野目洋子
【デビュー40周年】荻野目洋子 『ダンシング・ヒーロー』再ヒットのきっかけ“バブリーダンス”への感謝「幅広い世代の方と繋がることができた」
週刊ポスト
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
小野寺さんが1日目に行った施術は―
【スキンブースター】皮下に注射で製剤を注入する施術。顔全体と首に「ジュベルック」、ほうれい線に「リジュラン」、額・目尻・頰に「ボトックス」を注入。【高周波・レーザー治療】「レガートⅡ」「フラクショナルレーザー」というマシンによる治療でたるみやしわを改善
韓国2泊3日「プチ整形&エステ旅行」【完結編】 挑戦した54才女性は「少なくとも10才は若返ったと思います!」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン