スポーツ

池谷幸雄氏 遅咲き田中理恵に「途中までサボっていたのか」

 ロンドン五輪でメダルが期待される体操の田中理恵選手。兄の和仁・弟の佑典とともにオリンピック出場を果たし、“田中3兄弟”としても注目が集まるが、体操競技は、続ける側にも教える側にも苦労が付きまとう。ここでは、ソウル五輪、バルセロナ五輪で計4つのメダルを獲得した池谷幸雄氏にまつわる苦労と、同氏の田中評について、作家の山藤章一郎氏がリポートする。

 * * *
 西武・多摩湖線〈一橋学園駅〉から徒歩10分ほどの「池谷幸雄体操倶楽部」――炭酸マグネシウムの白い粉が幅33メートル、縦14メートルもある広い室内に舞い散る。園児から高校生までの50人ほどが、鉄棒、あん馬、吊り輪、マットなどの練習に励んでいる。

 園児は、寝転がってたとえばカメになる。仰向けで手足をつき裏返しの四つん這いで、10メートルほど前進する。この幼いグループから運動能力が高く、やる気を出す者を選手コースに組み入れて育てる。月謝は週6日の練習で2万2000~2万5000円。10歳、体操歴5年、Tくんの母子の1日の生活。

 学校に車で子どもを迎えに行って倶楽部に送り届け、いったん帰宅し、夜9時50分にふたたび迎えに行く。子どもの夕飯は、帰りの車の中。アレルギーだから和食中心の弁当。帰宅すると、宿題、風呂など。寝るのは深夜12時。それを週に6日。

――大変な労力と時間を要します。

「くたくたですが、オリンピックを夢見て」

――お金もかかりますね。

「なんとか、がんばってます。買うものも買わないようにして」

――子どもがやめたいといいだしたときはどうしますか。

「これまで人生の半分を体操に費やしてきたんです。完全にやめちゃうのはやはりもったいない。その時が、ちょっと怖いですね」

 この体操倶楽部で、池谷幸雄氏の母・幸子さんは受付をしている。「年中、無休無給」の「私はボランティア」と笑う。建物と体操器具購入に約2億円かかった。

 池谷氏の話。
 
「恥ずかしい話だけど、いまだにプラスチック関連の会社を興した父親の援助を仰いでいます。子どもたちの月謝だけに頼って運営はできません。冷暖房、空調だけで2500万円もする。そして体操器具が本当に高い。人件費も高い。子どもが、けがをするとすぐに治療できるよう、接骨院もいるのです。10人を教えるのにコーチが一人必要で、そもそも体操専業の倶楽部は、ビジネスとして存立しないのです」

――それでも、体操を?

「球はだれでも投げられるし、だれでも打てる。しかし、バク転はできない。体操は普通の体ではできないスポーツです。難しいワザを成功させるには努力の積み重ねによる相応の筋肉の柔軟性が必要です。

 高い難易度のワザが成功すると、喜びと達成感が待っている。それを次の代の子どもたちに教える。ビジネスとしては苦しい。しかし、なんとか頑張るのはそのためです。男子なら27歳くらいまでメダルが狙えます」

――田中理恵は?

「珍しいですね。学生時代はパッとせず、25歳のいま頂点まで伸びてきた。努力の日も知っていますが、高校大学の途中までサボってたんでしょうかね」

※週刊ポスト2012年8月3日号

関連キーワード

トピックス

初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン