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中国10人殺害の連続銀行強盗犯 恋人への電話がもとで銃殺

 中国で1997年から銀行強盗を繰り返し、計10人を殺害した最重要指名手配犯が8月14日、四川省重慶市郊外の村で警官に射殺された。米映画『明日に向かって撃て』を彷彿とさせる事件は中国国内でも大きな関心を呼んでいる。

 犯人の周克華は重慶市出身で、1970年生まれ。身長は167センチと中肉中背で、それほど大柄でもない。周は20歳で人民解放軍に入隊したが、体調不良になり、3年後の1993年に除隊。

 その後、重慶市の実家に戻ったが、仕事もせずにブラブラしていて、地元のマフィア組織の構成員と付き合うようになり、お決まりの犯罪の道にはまることとなった。1997年からは仲間と銀行強盗を繰り返していた。ところが、2005年10月には短銃の不法取引で逮捕され、3年間の懲役刑の判決を受けるが、銀行強盗については隠し通した。

 出所後、再び銀行強盗に手を染めるようになるが、おもに単独で犯行、これまでに重慶市のほか、湖南省や江蘇省などでも犯行を繰り返して、分かっているだけで10人を殺害、6人に負傷させている。すべて拳銃による射殺で、例外なく頭を打ち抜くという残酷な殺し方だ。

 今年1月、南京市内の銀行で20万元(約270万円)を引き出した男性が襲われる事件があり、犯人は車で逃走。目撃情報などから周の犯行と分かり、警察や軍の兵士らを大量に動員した作戦を展開したものの、周はまんまと逃走した。

 メンツを潰された警察は周を捕まえた者には生死に関わらず540万元(約7000万円)の賞金をかけるなど、国家の威信をかけた捜査を展開。

 そのころ、周の恋人が重慶市に潜んでいることが判明し、警察はこの恋人の身柄を拘束し、24時間体制の監視下に置いた。周は携帯電話から恋人に電話をかけたため、足取りが分かり、周も重慶市内に潜伏していることが分かった。

 そして、8月10日午後、重慶市内の銀行のATMで現金を引き出した女性が撃たれて死亡する事件が発生。さらに、数時間後、周を追っていた警官が銃撃を受けて死亡した。

 この事件を受けて、警官や人民解放軍の兵士ら数万人が動員されるなど異例の大捜査網が敷かれた。

 警察は13日、重慶市郊外の大規模な山狩りを行ない、周が潜んでいた洞穴を発見。さらに、14日早朝、民家に現れた周を目撃した地元の農家の女性が通報。新華社電では、周は駆けつけた警官数人と銃撃戦を展開し、射殺されたという。通報者の女性には賞金として60万元(780万円)が与えられることが決まった。

 しかし、目撃者の話を聞いた重慶市民のブログによると、周は警官隊に取り囲まれ、進退窮まって、恋人に電話したあと、自らの頭を打ち抜いたという。中国当局としては、周が自殺したとしても、警察の威信をかけたメンツから、射殺したと発表した可能性もある。新華社が報じた周の死体の足下にはサングラスと拳銃のほか、携帯電話が転がっていた。

 いずれにせよ、この周の逃避行は、ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォードが哀愁とユーモアたっぷりに銀行強盗を演じた『明日に向かって撃て』を連想させるような活劇とでもいえようか。

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