スポーツ

甲子園常連校 関西から留学受け入れでチームが関西弁になる

 甲子園は野球少年の夢舞台である。その夢を実現するための手段として、いまや切っても切り離せないのが「野球留学」。特に「関西」は、優秀な選手が全国に散っていくことで知られる。甲子園で取材を続けるノンフィクション・ライターの神田憲行氏がレポートする。

 * * *
 高校野球が盛り上がると、いつもネットで話題になるのが野球留学組の存在だ。とくに関西出身者が多く、「大阪第二代表」などと口さがない呼ばれ方もする。しかしとくに関西だけが野球が強いというわけでもないし、関東にも好選手は多いはず。なぜ野球留学に関西人が多いのか考えてみた。

 今大会49代表のベンチ入りメンバー(1チーム18人、全体で882人)のうち、関西人(大阪、兵庫、京都、奈良、滋賀、和歌山)の数は193人いた。およそスタメンのうち2人が関西人という勘定になる。在籍している高校の「北限」が光星学院(青森)、「南限」が神村学園(鹿児島)、ほぼ全域に渡って分布している。

 野球留学した関西出身者に理由を尋ねると、「中学のチーム関係者に勧められた」と選手が多い。中学で硬式野球をする「ボーイズ・リーグ」(関東では「シニア」)などがあり、まず送り出す側が熱心なのだ。かつて東北地方の私立野球校の監督をしていた人物は、

「毎年暮れになると、大阪のボーイズのチームから選手が月替わりで写真紹介されたカレンダーが送られてきた。選手カタログみたいだった」

 という。ボーイズのそのチームに所属すると、遠隔地の野球校を紹介してもらえる→甲子園に出て野球で進学・就職もしやすくなる→それを目当てにボーイズに選手が集まる、という構図だ。選手が挙げた理由は他にも「レギュラーでなくても練習させてくれる」「甲子園に出るためには厳しい寮生活も必要だと思った」などがあった。

 受け入れる側はどうか。

「いろんな地域出身者と混じり合うことが、地元青森の生徒にも良い刺激になる。社会に出るためにも必要なことだと思う」(ベンチ入りメンバーが8府県にまたがる光星学院・小坂貫志部長)

「私自身もそうでしたが、15歳で親元を離れて寮生活で野球をする生徒は覚悟が違います」(ベンチ入りメンバーが全員他府県出身者の島根・立正大淞南の太田充監督)

 かつて関西出身者を多く受け入れてきた酒田南(山形)の鈴木剛部長は、

「やっぱり関西の子は打たれ強い。野球もたくさん見て来ているのでよく知っている」

 関西人と野球をしている地元の選手は「いつの間にか関西弁がうつってる」「走塁がこすい(ズルイ)。関西であんな野球をしていたのかと驚いた」と感想を言う。これは私も取材経験がある。関東から野球留学した選手は地元の方言を話すが、関西から行くとチームが関西弁になる。またバントしてゴロが弱くて捕手が前に出てきそうになると、打者走者がわざとスタートを遅らせて前に出ようとする捕手をブロックするなど、関西野球にはサッカーでいう「マリーシア(ずる賢さ)」がある。

 ベンチ入りメンバー全員が県外出身者で、部員81人中県内出身者は2人という香川西の福井聡部長はこういう。

「メンバーは学校とグラウンドの行き帰りに市民の方から声をかけてもらったり、近所のスーパーでも顔と名前を覚えてもらってる。県外から来た子なんですが、(学校のある)三豊の子なんです」

 野球留学は、そんなに非難されることなのだろうか。

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン