スポーツ

新日本プロレス10年ぶりにチケット完売 企業買収の成功例に

 新日本プロレスが復活した。今月12日のリーグ戦ではチケットが完売したという。なぜか。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏は「元気のない日本企業よ、新日本プロレスの買収劇に学べ」と説く。

 * * *
 きてます!きてます!あ、ハンドパワーではないですよ。何度目かのプロレスブームがすぐそこにきてます!

 8月12日(日)に両国国技館で開催された、最強の男を決める夏のリーグ戦、G1クライマックスのチケットは、当日券も含めて見事に完売になりました。本当に、1枚もなかったそうです。今回で第22回となるこの大会ですが、当日券も含めて完売したのは実に10年ぶりだとか。明らかに一般のプロレスファン以外もやってきている様子です。決勝は前IWGP世界ヘビー級チャンピオン、24歳の「レインメーカー」ことオカダカズチカが、エース級外国人でありつつもダークホースだったカール・アンダーソンと対決。手に汗にぎる攻防の連続から、オカダカズチカが勝利を収め、最年少優勝記録を更新しました。

 ではなぜ、今、新日本プロレスがブームになりかけているのでしょう? ここ数年、新日本プロレスのマット上は充実し続けていました。もう新日本プロレスのリングには猪木も長州も藤波もいません。蝶野正洋も退団しています。棚橋弘至、中邑真輔といった新世代のスターたちがリングを盛り上げています。いや、棚橋、中邑だけではありません。20代、30代の新しいスターたちが育っています。その上、鈴木みのる、小島聡といった以前からのスターレスラーもおり、盛り上がりを見せています。それぞれキャラが立っていて、得意のムーブ、決め台詞で盛り上げています。私も思わず毎日、家で妻を相手に中邑真輔のボマイエという技を決める前のムーブを真似してしまいます。試合内容も、一時迷走していた頃の格闘技色は薄れ、プロレスならではの攻防、面白さを追求しています。記者会見もYouTubeで配信。主要選手はほぼ全員、Twitterをやっています。

 でも、それだけではないのです。新日本プロレスを今年、カードゲームのブシロードが買収したのです。以前はTVゲームのユークスが株を保有していました。ブシロードが株主になってから、広告なども派手に行うようになりました。それこそ、今回の大会の前には、山手線に交通広告が掲載され、話題になりました。あまりにも人相の悪いレスラーが審査を通らなかったとか、乳首はダメだったなどの説がネットで流れていましたが・・・。ただ、株主が変わったことによって、カードゲームを売らんかなというモードになるかと思えば、そうではなく、実によいバランスになっていると感じます。

 企業買収というとネガティブな印象がありますが、実際はそうでもありません。株主が変わることにより、元気になる企業もよく見聞きしてきました。私自身、企業買収ファンドの方と仕事をしたことがあるのですが、ハゲタカというイメージがつきがちな彼ら、意外と人格者です。もちろん、既存のトップ層を入れかえる、不採算部門を切り離すなどのこともするわけですが、従業員のモチベーションはかなり意識するのですよね。

 プロレスファン、エンタメ業界関係者と話す度に「新日本プロレスはブシロードに買われてよかったね」という話になります。ブシロードの側としても、買収するからにはコンテンツとしての魅力を感じているのと、今後の伸びを期待できるからでしょう。ハッピーな企業買収というのは、ありえるのです。

 ソニーやシャープなど日本の電機メーカーの不振が伝えられます。日本人として応援したいのですが、素敵な株主に期待するのも手だと思ったりします。皆さん、新日本プロレスの快進撃に学びましょう。


関連キーワード

関連記事

トピックス

問題は小川晶・市長に政治家としての資質が問われていること(時事通信フォト)
「ズバリ、彼女の魅力は顔だよ」前橋市・小川晶市長、“ラブホ通い”発覚後も熱烈支援者からは擁護の声、支援団体幹部「彼女を信じているよ」
週刊ポスト
米倉涼子を追い詰めたのはだれか(時事通信フォト)
《米倉涼子マトリガサ入れ報道の深層》ダンサー恋人だけではない「モラハラ疑惑」「覚醒剤で逮捕」「隠し子」…男性のトラブルに巻き込まれるパターンが多いその人生
週刊ポスト
新聞・テレビにとってなぜ「高市政権ができない」ほうが有り難いのか(時事通信フォト)
《自民党総裁選の予測も大外れ》解散風を煽り「自民苦戦」を書き立てる新聞・テレビから透けて見える“高市政権では政権中枢に食い込めない”メディアの事情
週刊ポスト
ソフトバンクの佐藤直樹(時事通信フォト)
【独自】ソフトバンクドラ1佐藤直樹が婚約者への顔面殴打で警察沙汰 女性は「殺されるかと思った」リーグ優勝に貢献した“鷹のスピードスター”が男女トラブル 双方被害届の泥沼
NEWSポストセブン
女性初の自民党総裁に就いた高市早苗氏(時事通信フォト)
《高市早苗氏、自民党総裁選での逆転劇》麻生氏の心変わりの理由は“党員票”と舛添要一氏が指摘「党員の意見を最優先することがもっとも無難で納得できる理由になる」 
女性セブン
出廷した水原一平被告(共同通信フォト)
《水原一平を待ち続ける》最愛の妻・Aさんが“引っ越し”、夫婦で住んでいた「プール付きマンション」を解約…「一平さんしか家族がいない」明かされていた一途な思い
NEWSポストセブン
公務に臨まれるたびに、そのファッションが注目を集める秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
「スタイリストはいないの?」秋篠宮家・佳子さまがお召しになった“クッキリ服”に賛否、世界各地のSNSやウェブサイトで反響広まる
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
巨人を引退した長野久義、妻でテレビ朝日アナウンサーの下平さやか(左・時事通信フォト)
《結婚10年目に引退》巨人・長野久義、12歳年上妻のテレ朝・下平さやかアナが明かしていた夫への“不満” 「写真を断られて」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 電撃解散なら「高市自民240議席の激勝」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 電撃解散なら「高市自民240議席の激勝」ほか
NEWSポストセブン