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「年金後納」過去10年分支払うチャンス 今から得をする人も

日本年金機構から、郵送でお手元に『国民年金保険料の納付可能期間延長のお知らせ』なるものが届いている人は、結構いるのではないか。対象は約1700万人。過去10年以内に国民年金の保険料を納め忘れている方である。

この10月から期間限定で過去10年前までの分を納めることができるようになるため、これはチャンスというのはファイナンシャル・プランナーの伊藤亮太氏だ。

 * * *
『国民年金保険料の納付可能期間延長のお知らせ』には、平成24年10月1日から平成27年9月30日までの間に限り、厚生労働大臣の承認を得たうえで、過去10年間の納め忘れた国民年金保険料を納付することが可能となるといった内容が記載されている。この過去の保険料を納める仕組みを“後納制度”といい、以前は過去2年分までしか後に納めることができなかったが、10月からは期間限定で過去10年前までの分を納めることができるようになるのである。

■過去の保険料を支払うことで、年金がもらえる人も

 これによってどんな方が救われるか。

 国民年金は、原則として、25年以上保険料を支払っていなければ支給されない。例えば、現在55歳の方で、10年前までに5年間分しか納付していなかったとしよう。国民年金は、原則60歳まで保険料を納めることになるが、65歳まで任意加入により保険料を納めることは可能である。

 そうすると、現在55歳の方の場合、これから保険料を納め、かつ任意加入した場合には10年間分の保険料を納めることができる(なお、60歳まできっちり保険料を納めた方は、任意加入は不要)。この方の場合には、今まで納めた保険期間5年と、今後加入可能な10年を足しても15年分しか保険料を納めることが出来ず、今までであれば国民年金をもらうことができなかったわけである。しかしながら、今回の特例を利用すれば、なんとか25年分の国民年金保険料を納めることができ、国民年金を受け取ることが可能になるのだ(※)。

 国民年金の年金額を増やしたいと思っている方にも朗報である。時効により支払いたくても支払わなかった保険料を納めることができるようになるため、年金額の増額につながる。

 1ヵ月の納付で増額される年金額の目安は、平成24年度の年金額で計算すると年額1638円。10年間ももらえば元が取れる計算である。しかも支払った保険料は、全額社会保険料控除となるため、税制上も優遇される。

 なお、この特例が終了する平成27年10月からは、国民年金の受給資格期間は10年に短縮される予定。つまり、10年分以上支払っていれば、いくらかは年金としてもらえることになる予定である。

 しかしながら、実際にはどうなるかわからないし、10年間保険料を納めたとしても40年納めた人の4分の1しかもらえないわけであるから、過去10年以内に支払い忘れている方で、増額したい方や、25年以上納めて確実にもらいたい方には今がチャンスといえるであろう。

■「後納制度」を利用するには

『国民年金保険料の納付可能期間延長のお知らせ』が届いたあなた。もし後納制度を利用したい場合には、お近くの年金事務所へ年金手帳等の基礎年金番号がわかるものを持参して相談するか、もしくは国民年金後納保険料納付申込書に必要事項を記載の上、年金事務所に提出する必要がある。

 ちなみに、後納制度を利用する場合、後納は古い期間から行うことになる。また、過去2N年分に関しては当時の保険料を支払えばよいが、それ以上前の保険料の場合、当時の保険料にペナルティとして利息相当額が加算される点には注意したい。

※国民年金は40年間納めて、平成24年度の場合年間で78万6500円支給される。
そのため、25年間の納付では、実際には平成24年度の場合、49万1600円の支給となる。

ファイナンシャル・プランナー 伊藤亮太
http://www.ryota-ito.jp/

<プロフィール>
無駄遣い指摘・お得なマネー情報紹介アドバイザー。経済評論家。年間を通して数多くのマネー相談(家計簿診断、資産運用相談など)を行い、FP資格関連書籍六冊、証券外務員資格関連書籍一冊、金融入門一冊等、執筆も多数。大阪証券取引所、SBI証券、スルガ銀行、紀陽銀行等の金融機関、大東文化大、立教大学等で資産運用関連、金融業界動向の講義など多角的に活動中。2011年秋学期からは東洋大学経営学部会計ファイナンス学科非常勤講師も務める。

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