国内

栃木県矢板市 シャープからの法人税が数年で98.6%減少

 シャープが苦悶にあえいでいる。シャープの工場が立つ地方自治体の中には、税収の多くをシャープに委ねているところも存在する。作家の山藤章一郎氏が、シャープの工場がある栃木県矢板市を訪れた。

 * * *
 明治期、この辺りは、那須野が原と呼ばれる一面の原野だった。水路を築いて開墾するしか生きる途はない、町名を自ら名乗った地元有力者の矢板武という人物がそれを成した。 

 大戦期、伐りだした材木を扱い、農業を拓いた町に、疎開政策の電機、繊維などの軍需工場が移転してきた。やがてそれも衰退し、町は企業誘致運動を展開する。〈早川電機工業〉が応じた。

 ハローワークから車で5分、〈早川〉の名を冠した〈矢板市早川町〉。畑と空き地と国道とシャープ〈AVシステム事業本部〉しかない町である。〈シャープ〉の敷地は、体育館、テニスコート、グラウンド、研修所を有する33ヘクタールで、徒歩でめぐると1時間半ほどかかる。

 ブラウン管テレビ、VHSビデオが最盛期の昭和50年代、3000人が働き、派遣を乗せたバスが走りまわったという。現在、従業員は半減。9月初めの午後2時。敷地内の社宅に干し物がかかり、小型車が数百台駐車していた。だが、人の姿はまったくない。稼働しているのかどうかも分からない。工場の脇道に、矢板市会議員の大貫氏が宣伝カーを停めていた。

「市長が直接シャープにお願いに行きました。液晶テレビはしょうがない、でも、太陽光関連のラインは稼働してほしいと。もう40年以上のお付き合いになります。市は、コピー機などの事務用品から家電まですべてシャープを買ってきました。しかし、リーマンショック前に較べ、ここ数年シャープからの法人税は98.6%減少した。それでも、税収でも雇用でも、シャープがなくなったら、市は成り立たないのです」

※週刊ポスト2012年9月21・28日号

関連キーワード

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン