ライフ

餃子日本一を争ってきた浜松と宇都宮が歴史的和解へ態度軟化

餃子日本一をめぐってバトルが続いていた

「餃子日本一」をめぐってともに主張を繰り広げてきた宇都宮餃子と浜松餃子が先月末、「歴史的和解」への道をたどり始めた。なにが争点だったのか、雪解けはどのようにして行われたのか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

 * * *
 浜松と宇都宮の「和解」が形になった。そう、数ヶ月前にも書いた宇都宮と浜松の「餃子バトル」の話である。

「餃子バトル」の発端は、2007年に浜松市が独自調査をベースに、「餃子消費量日本一」と浜松=餃子の街と喧伝したことだった。これに対して総務省の家計調査で「餃子年間購入額日本一」(当時)だった宇都宮市は、調査手法の違いなどを理由に「納得できない」と態度を硬化させた。さらに同年と翌年、「浜松餃子まつり」に、栃木県外で営業する「宇都宮餃子会」非加盟の店舗を「宇都宮餃子」として出店させたことなどに宇都宮が不信感を募らせたという。

 その後も、2010年に浜松で行われた「第1回餃子サミット」「浜松餃子まつり」への招待を宇都宮が断った。翌2011年に三重県津市で行われた「第二回餃子サミット」でも、浜松への不信感を払拭できない宇都宮サイドの不参加問題が取り沙汰されていた。浜松ではない地域で行われる餃子イベントであっても、不参加が囁かれるほど宇都宮の浜松に対する怒りは大きかったということのようだ。が、ぎりぎりのタイミングで事態は収拾された。報道をまとめると、その経緯は次の通りだ。

 2011年の「第2回餃子サミット」開催前、主催者である「津ぎょうざ協会」の担当者が宇都宮まで足を運び「浜松との話し合いの場を作らせてくれ」と宇都宮餃子会の担当者を説得。当初は宇都宮もかたくなだったというが、津の担当者の説得により3者会談が実現した。そして浜松の「(宇都宮に対して)不快な思いをさせたなら申し訳ない」との姿勢に宇都宮も「互いに餃子で日本を元気にしたいという気持ち」と態度を軟化させたというのだ。

 こうして宇都宮が「餃子サミット」に出席することとなり、両者の良好な関係づくりがスタートした。そして今年の9月29、30日に行われた「浜松餃子まつり2012」に、初めて公式「宇都宮餃子」が出店したというわけだ。

 既報の通り、今年1月に発表された総務省の家計調査では、「2011年の餃子の世帯あたり購入額」では浜松市がトップの座を奪取した。2位となった宇都宮の地元紙・下野新聞の1面には「15年間守り続けてきた「日本一」の座から陥落」と大きな見出しが打たれた。その後、下野新聞社のサイト内に立ち上げられた「宇都宮餃子日本一奪還計画~為すべきことは、ただひとつ。食って、食って、食いまくれ!」というWebページでは、両市の毎月の家計調査の結果が報告されている。

 2012年の途中経過(1~8月)の餃子購入額は、浜松市3017円に対し、宇都宮市2845円。浜松市がリードしているものの、その差はわずか172円。7、8月の月間では宇都宮が1位を奪取しており、年末までには逆転も十分可能だ。

 宇都宮では焼き餃子、水餃子はどの店にもあり、揚げ餃子を出す店も少なくない。なかにはビールはおろか、ライスすらなく「メニューは焼きと水のみ」という「餃子」に徹底した店もある。一方浜松では、「キャベツたっぷりの餡」の焼き餃子が定番で、そこにもやしが添えられる。ただし、どちらにも明確な定義はないのが、「庶民の食」たる餃子らしいところでもある。

 餃子にから揚げ、最近話題のカツカレー。最近話題の「食」には、いずれも無限のバリエーションがある。庶民の食事はかくも豊かな色彩に……いや、茶色に彩られている。

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン