ライフ

注文から90秒で焼き上げる早出しピザ 宅配27年の歴史に挑戦

90秒の早出しピザが人気。マルゲリータは350円 

 注文したら、最短90秒でアツアツのマルゲリータが完成。その値段、350円。「早い&安い」が売りのファストフードタイプのピザ店「ナポリス ピッツア&カフェ」が話題だ。運営する遠藤商事は4月に直営1号店を東京・渋谷神南にオープン、その後、自由が丘、下北沢にフランチャイズチェーンを出店した。1年間で100店舗を目指す予定だという。

 これまで、ピザにはファストフード形式の専門店はなかった。なぜナポリスはそれができたのか。第一に、独自機器の導入にある。ナポリスのピザは低価格とはいえ、注文を受けてから生地をのばし、具をトッピングして、窯で焼き上げるという本格派だが、技術がなくとも生地を伸ばせるマシンや、3枚同時に焼くことのできるピザ窯を設置し、人件費を抑える仕組みを構築。早さと安さの両立を実現した。もう一つは、ファストフードとして楽しめるピザを用意したことにある。

 あるフードコンサルタントは、ファストフードとして受け入れられるには、“常食”や“個食”がポイントになると語る。

「ピザというと今まで、チーズや具がどっさり、豪華だけど脂っこくて、1枚が数名分というというタイプが多かった。特別食とまでいなかくとも、日常食ではなかったんですね。ですが、ナポリスの350円マルゲリータはシンプルで、モチっとしていて、日本人好みの味。安いし、大きさ的にも一人で食べられる。これなら気軽に、定期的に食べたいと思う人が増えるのではないでしょうか」

 日本のピザの歴史を辿ると、宅配ピザの上陸は1985年、ドミノ・ピザの1号店である恵比寿点のオープンだった。以後、宅配店は全国に広がり、イタリアンレストランの隆盛とともにピザが一般的になっていく。そのため、ピザといえば価格帯は2000円~3000円程度、主にパーティやイベントなどで、数人でシェアして食べるというスタイルが主流になった。これに対してナポリスは、直径約25センチ、比較的シンプルな味のピザを打ち出している。

 従来の常識を翻すべく新たな市場に挑むナポリスの今後について、前出のフードコンサルタントはこう分析する。

「拡大のために、客単価を上げていきたいところです。そのためには、高価格帯のピザやサイドメニューを注文してもらいたい。重要になってくるのは、注文が多くなりやすい夜の顧客でしょう。ナポリスはアルコールを充実させて、夜のお客さんを増やそうとしているようですね」

 現在、市場全体を見渡しても、ピザはかつてないほど多く食べられている。2011年度、ピザ市場は2459億円と過去最高を記録した(ピザ協議会発表)。ファストフードに限らず、様々な業態の参入も相次いでいる。店内調理をする「FF(ファストフード)強化型」店舗を増やしているサークルKは、焼き立てピザの提供を開始。ケンタッキーフライドチキンは「ピザハット・ナチュラル」を展開しており、先月5店目をオープン。石窯で焼き上げる本格ピザなどが食べ放題のビュッフェ形式のレストランだ。

 ワンコインで楽しめるピザ・ファストフード店の登場は、既存のファストフードを脅かす存在となるのか。

「例えば全国に3000店あるマクドナルド、当面は勝負にならないまでも、マックのお客さんにたまにはピザでも、と思わせることができるかどうかが定着の鍵になるでしょうね。どこも良い立地を欲していますから、まずは立地という点で、競合する局面が出てくると考えられます」(前出・フードコンサルタント)

 アツアツの戦いは幕を開けたばかりだ。

関連記事

トピックス

前回は歓喜の中心にいた3人だが…
《2026年WBCで連覇を目指す侍ジャパン》山本由伸も佐々木朗希も大谷翔平も投げられない? 激闘を制したドジャースの日本人トリオに立ちはだかるいくつもの壁
週刊ポスト
高市早苗首相(時事通信フォト)
高市早苗首相、16年前にフジテレビで披露したX JAPAN『Rusty Nail』の“完全になりきっていた”絶賛パフォーマンスの一方「後悔を感じている」か
女性セブン
2025年九州場所
《デヴィ夫人はマス席だったが…》九州場所の向正面に「溜席の着物美人」が姿を見せる 四股名入りの「ジェラートピケ浴衣地ワンピース女性」も登場 チケット不足のなか15日間の観戦をどう続けるかが注目
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
「『あまり外に出られない。ごめんね』と…」”普通の主婦”だった安福久美子容疑者の「26年間の隠伏での変化」、知人は「普段どおりの生活が“透明人間”になる手段だったのか…」《名古屋主婦殺人》
NEWSポストセブン
「第44回全国豊かな海づくり大会」に出席された(2025年11月9日、撮影/JMPA)
《海づくり大会ご出席》皇后雅子さま、毎年恒例の“海”コーデ 今年はエメラルドブルーのセットアップをお召しに 白が爽やかさを演出し、装飾のブレードでメリハリをつける
NEWSポストセブン
昨年8月末にフジテレビを退社した元アナウンサーの渡邊渚さん
「今この瞬間を感じる」──PTSDを乗り越えた渡邊渚さんが綴る「ひたむきに刺し子」の効果
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《中村橋之助が婚約発表》三田寛子が元乃木坂46・能條愛未に伝えた「安心しなさい」の意味…夫・芝翫の不倫報道でも揺るがなかった“家族としての思い”
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
「秋らしいブラウンコーデも素敵」皇后雅子さま、ワントーンコーデに取り入れたのは30年以上ご愛用の「フェラガモのバッグ」
NEWSポストセブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人》大分県警が八田與一容疑者を「海底ゴミ引き揚げ」 で“徹底捜査”か、漁港関係者が話す”手がかり発見の可能性”「過去に骨が見つかったのは1回」
愛子さま(撮影/JMPA)
愛子さま、母校の学園祭に“秋の休日スタイル”で参加 出店でカリカリチーズ棒を購入、ラップバトルもご観覧 リラックスされたご様子でリフレッシュタイムを満喫 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、筑波大学の学園祭を満喫 ご学友と会場を回り、写真撮影の依頼にも快く応対 深い時間までファミレスでおしゃべりに興じ、自転車で颯爽と帰宅 
女性セブン
クマによる被害が相次いでいる(getty images/「クマダス」より)
「胃の内容物の多くは人肉だった」「(遺体に)餌として喰われた痕跡が確認」十和利山熊襲撃事件、人間の味を覚えた“複数”のツキノワグマが起こした惨劇《本州最悪の被害》
NEWSポストセブン