みうらじゅん氏は、1958年京都生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広いジャンルで活躍。1997年「マイブーム」で流行語大賞受賞。仏教への造詣が深く、『見仏記』『マイ仏教』などの著書もある同氏が、マニアックなコレクションのゆくえについて考える。
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世の中には「全国の飲食店の箸袋」や「飲料の王冠」や「ホステスの名刺」などしょうもないコレクションをしている人がいるらしい。
骨董ならば、売れば金になる。なじみの店がなくとも各地の美術倶楽部に相談すればいろいろ教えてもらえる。だが、マニアックなコレクションを残された遺族はどうなるのか?
「親父の遺志を継いで、ホステスの名刺を増やしていくよ……」という奇特な息子はそうそういないだろう。なんとも悩ましい話だ。
かくいう私はといえば、他人様にしてみれば、本当にどうしようもないコレクションにかこまれて生活している。
まずは「甘えた坊主(坊主が木魚にしなだれたように甘えている人形)」や「二穴おやじ(ペン立て状の二つの穴の空いた台に白雪姫に出てくる小人の人形が載ったもの)」といった「いやげ物」が大量にある。
みずから“いやげ”と、もらっていやな物であることを認めてコレクションしているのだから、まぁ価値なんてものはない。まるでない。私の遺族にコレだけはいっておきたい。売るだのなんだの考えず、いやげ物はスッパリと捨てていただきたい!
続いて集めているのは怪獣グッズだ。フィギュアなどもたくさんあるが、一番高価だと思っているのが、「うたう怪獣写真カード30枚」というカード本だ。しかし自信満々だったにも拘わらず、『まんだらけ』のHPで調べたら、美品で売値1万2600円と出ていた……私の持ってるボロボロの品の買取価格などたかがしれてることが判明した。遺族よ。怪獣グッズも煮るなり焼くなり好きにしてほしい。
最後に、大枚はたいて買った新品の仏像がある。新品なんで骨董的価値はないが、これを煮たり焼いたりしたら罰が当たりそうなんで、好きに処分してもいいが、罰だけには気をつけた方がいい。
※週刊ポスト2012年10月19日号