ライフ

家呑みブーム 外飲みより誘われる側に抵抗感少ないとの分析

出生率上昇も家呑みブームを後押し

 お酒を外で飲まず自宅で楽しむ「家呑み」がブームだという。背景にあるのは意外にも出生率の上昇だった。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

 * * *
 ここ数年「静かなブーム」と言われてきた「家呑み」が今年、大ブレイクしている。

 今年行われた、アサヒホールディングスの「『家飲み』に関する意識調査」では全体の半分が「週4日以上」のペースで「家呑み」を楽しんでいるという。また、ライフメディアのリサーチバンクの調査では「1年前に比べて、家飲みの頻度が上がった」という回答が21%にものぼった。大手コンビニのセブンイレブンは、今年、全店の6割以上に当たる9500店で酒類の売り場を5割拡大。全国の書店でもこの10月だけで「家呑み」「家飲み」がタイトルに冠された書籍が3冊発売された。

 まさに「家呑み」大ブレイクである。今年、これほどのブレイクに至った理由には「節約型ライフスタイル」の定着に加えて「家呑み女子」の増加、そして「少子化に歯止めがかかった」ことなどが考えられる。

 厚生労働省の全国調査によると、20代女性の飲酒率は2003年から2008年の間に10ポイント上昇して、90.4%となり、この時点で男性の83.5%を抜いた。この数字からも「家呑み」人気に、「飲酒系女子」が一役買っていることが伺える。

 加えて、出生率上昇が「家呑み」ブームを後押しする。日本の出生率は、2005年に1.26で底を打った後は、微増ながらも右肩上がりで2011年には1.39にまで回復した。これまで共働きで「外呑み」「外メシ」を享受してきた夫婦が、育児環境に置かれるようになった。

 授乳中の女性からは「早く(授乳期間を終えて)、お酒飲みた~い」という声も聞こえてくる。だが、授乳期間を終えても、子どもを連れての外食となると、店選びも限られる。そこで「家呑み」という選択肢が浮上してくる。しかも前述のようなレシピ本や「中食」が家庭に浸透したこともあり、家呑みにおける、つまみのクオリティはこの10年ほどで飛躍的に向上した。

 レシピ本『家呑み道場』内で「大人の家呑み力検定」を展開する、大人力&検定系コラムニスト&給食系男子の石原壮一郎氏は、「家呑み」の社会的影響をこう語る。

「『家呑み』ブームは少子化対策に大変有効なトレンドと考えられます。現代の若者には『外飲み』でほろ酔いになり、ホテルに誘うという段取りが苦手な人も多い。しかし『家呑み』ならば、『おいしいレシピ覚えたから、家呑みにおいでよ』と、あたかも下心がないかのように誘うことができる。誘われる側にも抵抗感が少なく、『家呑みなら行こうかな』という言い訳も用意できます。

 その上ほろ酔い気分で、隣に手を伸ばせば、なし崩し的に次の段階に進むことができる。下心がある人には、ホテル代もかからず、二重の意味で安上がり。万が一、下心がなかったとしても、気楽に振る舞えるので、人間関係の構築も無理なくできる。『家呑み道場』に掲載されているような、手軽なおつまみレシピを覚えておくことは、一石二鳥どころか一石五鳥にも六鳥にもなる、大人のたしなみと言えるでしょう」

 この8月には「日本ホームパーティ協会」という社団法人も設立され、10月には神戸の製菓会社が「第1回 家飲み川柳」という川柳賞をスタートさせた。大阪では「立ち呑み 家呑み」という店名の、もはや家呑みなのか、外飲みなのか、立ち呑みなのかわからないバーも人気を博しているという。

「家呑み」というスタイルは、もはやブームを超え、「家呑み文化」という新たな文化を構築するステージに差しかかっていると言えそうだ。

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン