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ビジネスホテルの独自色 ベッド、朝食、大浴場に夜鳴きそば

 急速拡大を続けるビジネスホテルの戦略やサービスは、駅前の利便性に留まらず、それぞれがサービスを競い合って個性を出している。ホテル業界関係者が明かす。

「特に今のビジネスホテルが注力しているのは、“3B”と呼ばれるもの。すなわちベッド、ブレックファスト(朝食)、バス(大浴場)を指します」

 企業への営業活動で、月数回の東京出張がある中堅飲食メーカー勤務のAさんのお気に入りは「スーパーホテル」だ。

「一日中、都内の得意先回りをすることになるので足が棒になる。寝るだけのビジネスホテルだからこそ、大浴場やゆったりベッドのあるホテル環境はありがたい。疲れを癒すのに最適なんです」

 全国に104店を展開する同ホテルは、3Bを前面に打ち出したサービスに拘る。49店で天然温泉完備、朝食は健康素材を使った健康朝食、健康パン朝食をビュッフェスタイルで店舗ごとに出す。

 一番の売りは“眠りの質”だ。部屋の騒音は40デシベル以下に抑え、高さ、堅さ、材質の異なる7種類の枕を用意。150cm幅のベッドは、「テレビ鑑賞も読書も部屋にいったん入れば、ベッドの上でほとんど済ませる」(Aさん)という人も満足できる、ゆったりサイズとなっている。

「コンセプトは“安心、清潔、ぐっすり”。ビジネスマンは滞在中の8割がベッドの上ということを考慮した結果です」(山本智英・経営品質部長)

 他のビジネスホテルも負けてはいない。

「アパホテル」の朝食は和食、洋食など店ごとに異なり、中にはシェフ実演の卵料理が味わえる50種類以上のバイキング(東京潮見駅前)などシティホテル並みの充実ぶり。「ドーミーイン」では午後9時半から11時まで夜食の夜鳴きそばをサービスする。

「一仕事終えて飲んだ後、寝る前のそばは腹に染みますね」(40代中堅印刷メーカー男性会社員)

 業界最大手の「ルートイン」でも、豊富な朝食メニューに加え、天然温泉大浴場や展望大浴場を備えたタイプのホテルを展開する。室内の装飾品やアメニティにも工夫を凝らし、室内着も一般的な浴衣ではなく甚平という、利用者には嬉しい細かいサービスを行なう。

 民間旅行代理店などの人気ビジネスホテルランキングで常に上位にランクされる「ドーミーイン」も、“我が家でくつろぐように疲れを癒してほしい”というコンセプトで大半の店舗に大浴場を完備した。

「平日はビジネスマン、週末は観光客の集客を狙っています。ツインには畳部屋も用意し、団塊世代のご夫婦旅行にも利用していただきやすいように配慮しています」(事業本部・藤井俊輔副部長)

 各社のこうしたサービス向上の背景には顧客獲得以外の狙いもある。前出・ホテル業界関係者が明かす。

「大浴場があれば室内の浴室を使わないので、客室のシャンプーや石鹸の経費、掃除の手間を省くことができる。それにベッドさえ大きければ、部屋が多少狭くても苦情は出ないから、以前は15平方メートルだったシングル部屋は12平方メートルが主流になり、その分客室を増やしている。中にはたった9平方メートルという施設もあり、経費削減に繋げている」

※週刊ポスト2012年11月30日号

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