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日産 後発でも中国販売台数を急速に伸ばした事情を識者解説

 パッタリと途絶えた客足。全土で広がった反日デモを受けて、9月の中国の日産ショールームは静寂に包まれた。日産の中国合弁企業である東風汽車有限公司の幹部がこう語る。

「毎日のように日本の本社にディーラーへの来店者数などを報告していましたが、9月いっぱいはかなり厳しい数字で焦りました」

 9月の中国市場での販売台数は昨年に比べ35%も少ない7万6000台にとどまった。日産は2003年、日系メーカーの中では最も遅く中国市場に参入したが、急速に販売台数を伸ばし、今では先行参入していたトヨタ自動車、ホンダを抑え、目下日本勢トップを快走中。トップシェア企業であるぶん、販売減による打撃も深刻だった。

「状況は落ち着きを取り戻しつつある。2か月くらいのうちに正常に戻ってくれればいいと思っている」

 西川廣人副社長は10月中旬の会見で楽観的な見方を示した。が、心中穏やかであろうはずがない。現在、日産は2016年度までに世界シェア8%、営業利益率8%を達成するというきわめて野心的な中期経営計画「日産パワー88」を推進している(同計画が始まる直前の2011年3月期はシェア5.8%、営業利益率6.1%)。

 計画達成のため最重要市場に位置づけられているのは中国である。それだけに顧客の引き戻しに懸命だ。

「2か月という数字には、ある程度確信があるんです。10月8日に国慶節の休暇が明けてから、ディーラーへの客足が次第に戻り始めました。また、最初に来店してから契約に至るまでの来店回数も次第に縮まっています。それらのデータを科学的に見て、2か月くらいで回復するのではないかと予測したんです」

 志賀俊之COO(最高執行責任者)は、本誌取材にこう語った。日産が中国市場に自信を持つ理由のひとつに、現地進出の形態が他社と異なる点が挙げられる。

 中国は輸入車に高い関税をかける一方、国内生産は原則として中国企業との合弁事業でなければ認めていない。第一汽車とトヨタで一汽豊田、広州汽車とホンダで広州本田などと、折半出資で合弁会社を設立するのが一般的だ。しかも、現地法人2社と手を組んでいるケースが多い。

 日産のパートナーは、中国内陸部の湖北省武漢を拠点とする東風汽車1社のみ。大手でパートナー1社ということ自体珍しいが、他社との違いはそれだけではない。日産が東風汽車本体に出資し、合弁事業として日産車の生産を行なう形式なのだ。

「日中の親会社同士が資金を出し合ってまったく新しい合弁会社を作るのではなく、中国の会社に50%出資する形です。だから約7万人の従業員の中で日本人は100人程度。工場長をはじめ、マネジメントの多くも中国人に任せています。合弁としてはユニークな形で、お客様からも“中国企業”“中国車”と見てもらえている部分がある」(志賀氏)

 後発の日産が中国で急速に販売台数を伸ばすことができたのは、そうした事情も手伝ってのことだ。

■井元康一郎(ジャーナリスト)、永井隆(ジャーナリスト)、福田俊之(ジャーナリスト)

※SAPIO2012年12月号

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