小泉純一郎内閣が退陣して以降、6人もの総理大臣が約1年で交代を繰り返してきた。その間にこの国は国際的な発言力、影響力を低下させ、隣国は露骨なまでの領土・領海侵犯を繰り返すようになった。日本がまともな国に復活するには、強いリーダーが必要です――このほど『中国に立ち向かう覚悟』(小学館刊)を上梓した櫻井よしこ氏はそう説く。衆議院選挙を前に櫻井氏が、日本がいま取り組むべき課題について解説する。
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そもそも国家が主権を保つためには、最低でも「軍事」「経済」という2つの要件を充実させなければなりません。経済においては、日本はつい先頃までの20年間、GDPが500兆円台で横ばいを続けていました。しかもこの数年GDPは縮小し、いまは400兆円台に落ちています。世界の多くの国々が、9.11やリーマン・ショックなどがありながらも経済成長を続けているのとは対照的です。
日本は輸出額がGDPの14%、輸入額が13%で合わせて27%でしかありません。経済のパイを大きくするには貿易の拡大が必須であり、そのために国を開くことが大切です。
その意味で、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加は日本にとって絶対に必要です。TPPには経済面で中国の覇権拡大を牽制する意味もあります。TPPの拡大は、世界の知的財産権の侵害を国家ぐるみで行なってきた中国の過剰な影響力を殺いでいく効果をもたらし、民主主義と国際法を遵守する国々が中心となる舞台を作り上げることにつながるでしょう。
もちろん国益の視点から守るべきものは守らなければなりませんが、「コメを守るためには全部ダメ」という姿勢では日本はいつまでたっても開かれた国にはなれず、経済規模は縮小していくばかりです。ルールづくりの段階から積極的に参加し、TPPを国益につなげていく交渉力こそ発揮すべきだと思います。
※週刊ポスト2012年12月14日号