公務員改革を掲げた民主党政権がシロアリ官僚の言いなりとなっていく間に、官僚たちはこっそり自らの不祥事に「大甘処分」を下していた──。
ジャーナリスト・佐々木奎一氏が霞が関の全省庁に2009~2011年度の3年間の懲戒処分と内部処分(*)について情報公開請求し、懲戒処分755件、内部処分1046件の合計1801件の内部資料を入手した。その中身を精査したところ、人事院基準を無視した処分が次々と見つかった。ここでは農林水産省の甘い処分、報道されていない処分を取り上げる。
農林水産省は懲戒処分が173件、内部処分が386件あった。開示対象となった職員数、つまり母数は3616人+α(出先機関のうち職務級5級以上の職員=人数は無回答)である。開示資料に基づき、いくつか不祥事の具体的な内容を紹介する。■は黒塗りだった部分。
・ケースその1
【組織・肩書(処分日)】
農水省大臣官房統計部■■(2009年12月18日)
【内容】
のぞき見目的で■■2階から3階に至る階段の踊り場に設置された女子便所内に進入し、同便所内において、隣接する個室便所の仕切り板と床の隙間から、女性が使用中の便所内をひそかにのぞき見し、女子便所から出たところを■■に見咎められ逃走したが、近隣の■■敷地内で■■に取り押さえられ、警察署に通報され、建造物侵入及び軽犯罪法違反の容疑で現行犯逮捕された。
【処分】
戒告
・ケースその2
【組織・肩書(処分日)】
農水省動物検疫所門司支所農林水産技官(2010年2月15日)
【内容】
平成21年7月9日ころから同年10月6日ころまでの間、前後18回にわたり、■■中学校・高等学校に電話をかけ、「制服はどこで買えるんですか。」「生徒さんを襲って制服をとったっていいんですよ。」などと申し向けた。
【処分】
免職
・ケースその3
【組織・肩書(処分日)】
農水省消費・安全局■■(2011年9月9日)
【内容】
■■の電車内において、両腕を組み右肘の下の左手の指先が右隣に座っていた女性乗客の胸に触れていることに気が付いたが、同女は熟睡し、胸に触れていることに気がついていない様子であったことから、寝たふりをし、同女に寄りかかり、触れていた左手をさらに同女の胸に押し当て、そのまま胸を触りながら乗車していたところ、■■において、男性乗客から胸を触っていることを指摘され、■■で逃げようとしたところを取り押さえられ、警察官に■■に連行された。
【処分】
減給(1か月間、俸給の月額の10分の1)
(*注)国家公務員の処分は大きく「懲戒処分」と「内部処分」に分けられる。懲戒処分は重い順に免職、停職、減給、戒告の4種類。処分に応じて、昇給・昇格、期末・勤勉手当(ボーナス)、退職手当(退職金)などに大きく影響する。一方、内部処分は各省庁の内規で定めただけの処分で訓告、厳重注意、注意の3種類。昇給やボーナスに影響が出るケースもあるが、懲戒処分ほどではない軽微なもの。
※SAPIO2013年1月号