ライフ

故丸谷才一氏の上手な挨拶のコツ「悪口1に対し10ホメよ」

 今年10月に亡くなった丸谷才一氏は、稀代の“あいさつ上手”としても知られていた。名文家としても名高い丸谷氏は、あいさつに関する著書も複数上梓。ジャーナリストの山藤章一郎氏が、丸谷氏の“あいさつ術”を軸に、氏を偲ぶ。

 * * *
 丸谷才一──1925(大正14)年生まれ、2012(平成24)年、87歳で没する。山形県鶴岡市出身。東大英文科卒。国学院大講師などを経て、35歳のとき、長編小説『エホバの顔を避けて』を発表。以後、小説家、文藝評論家、エッセイストと多彩な活動をした。芥川賞、芸術選奨ほか受賞。そして、稀代の〈挨拶家〉だった。軽妙洒脱、しかしときに寸鉄を呑んで辛辣、されど優しく収める奥義が評判を呼んだ。

 世の中には、これだけの〈挨拶〉というものがある、あるいは、これだけの〈挨拶〉ができねば一人前の社会人とはいえぬと世知を教える〈挨拶大家〉だった。では〈大家〉はいかなる挨拶に心を砕いてきたか。

 その種類だけでも。受賞挨拶。選考過程発表。結婚披露宴祝辞。乾杯の辞。偲ぶ会挨拶。発刊パーティ祝賀挨拶。親族代表挨拶。選考委員祝辞。レセプション祝辞。ねぎらいの会挨拶。各種記念式典挨拶。快気祝い挨拶。お別れの会挨拶。そして弔辞。これらは、『挨拶はむづかしい』『挨拶はたいへんだ』『あいさつは一仕事』と、本にまでなっている。

 そこで、『あいさつは一仕事』の丸谷さんと和田誠さん(イラストレーター)の対談から、〈挨拶の要諦〉を当方で勝手に整理して紹介します。

一:長くしゃべってはいけません。世の中にはエライという人種がいる。社長、大臣。私がしゃべれば、みんな喜んで聞くと思っている。その錯覚ほど迷惑なものはありません。原稿に書いて、必要なところだけ話しなさい。

一:余計な前置きを入れなさんな。「彼と私は小学校以来の友達でありまして」それから高校になって、大学生になってと、なかなか本題に入らないのは、なんだか怒りすら覚えます。

一:引用はひとつにしなさい。三つも四つも、いろんなところから引くと、こんがらがるだけですよ。

一:面白い話、笑いが出るところを一か所つくってください。井上ひさしさん〈お別れの会〉の夫人の挨拶は参考になりました。こんなことをいったんですね。

「わたしはいままでひさしさんにあなたは天才だといってきた。するとひさしさんはそういうことは絶対よそに行っていっちゃいけないよって。でも、もう止める人はいないんだから、わたし、今日ははっきりいいます」

一:とにかく褒めなさい。悪口ひとつにつき、褒めが三つ、四つでは足りませんよ。十か二十は、褒めなさい。そして長所を並べたそのあとで「欠点は」と、すこうし、間を置いてから「多すぎるからやめましょう」といえばいいのです。

※週刊ポスト2013年1月1・11日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

食道がんであることを公表した石橋貴明、元妻の鈴木保奈美は沈黙を貫いている(左/Instagramより)
《“七三分け”白髪の石橋貴明が動き始めた》鈴木保奈美「私がお仕事をしてこられたのは…」“再ブレイクと闘病中”元夫婦の距離感
NEWSポストセブン
波瑠と高杉真宙の仲睦まじいツーショット
《波瑠がメガネと白セーター姿で高杉真宙にピッタリ寄り添い…》「思い出深い1年でした」新婚ホヤホヤの2人は“お揃いのデニムパンツ”で笑顔の神対応
NEWSポストセブン
『激走戦隊カーレンジャー』でピンクレーサー・八神洋子役を演じ、高い人気を得た来栖あつこさん
《スーパー戦隊50年の歴史に幕》「時代に合ったヒーローがいればいい」来栖あつこが明かすイエローとの永遠の別れ、『激走戦隊カーレンジャー』ピンクレーサー役を熱演
NEWSポストセブン
12月中旬にSNSで拡散された、秋篠宮さまのお姿を捉えた動画が波紋を広げている(時事通信フォト)
《識者が“皇族の喫煙事情”に言及》「普段の生活でタバコを吸われる場合は…」秋篠宮さまの“車内モクモク”動画に飛び交う疑問
NEWSポストセブン
小室さん眞子さんのNY生活を支える人物が外務大臣表彰
《小室眞子さん“美術の仕事”の夢が再燃》元プリンセスの立場を生かせる部署も…“超ホワイト”なメトロポリタン美術館就職への道
NEWSポストセブン
今年成年式を終えられた悠仁さま(2025年9月、東京・港区。撮影/JMPA) 
《自らモップがけも…》悠仁さまが筑波大バドミントンサークルで「特別扱いされない」実情 「ひっさー」と呼ばれる“フラットな関係”
週刊ポスト
結婚を発表した長澤まさみ(時事通信フォト)
《トップ女優・長澤まさみの結婚相手は斎藤工と旧知の仲で…》インスタ全削除の“意味深タイミング”
NEWSポストセブン
長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
箱わなによるクマ捕獲をためらうエリアも(時事通信フォト)
「クマが人里に降りてくるのは必然」「農業は野生動物に対する壮大な餌付け」 知床・ロシアでヒグマを撮った動物写真家が語る “現代の人間に欠けている自然観”
NEWSポストセブン
11人家族の宮前家
《子ども9人“大家族のパン屋さん”》「店員さんが注文を覚えきれなくて(笑)」11人家族のインフレ“金銭事情”と、大人数子育てで培ったこと「マニュアル本は役に立たない」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン