ライフ

石田衣良氏「仮想敵を作ってすぐ憎む気分は捨てた方が良い」

「政治にできることは限られている」と石田衣良氏

 2013年をどう生きるか。直木賞作家・石田衣良氏に聞く新春インタビューをお届けする。テーマは「政治」。自民党が復帰した政治について考えます。(聞き手=フリーライター・神田憲行)

 * * *
--昨年の衆院選で自民党が大勝で政権に返り咲きました。どのような感想を持ちましたか。

石田衣良:僕たちはあまりにもこらえ性が無くなってしまいました。投票用紙をムチとかこん棒のようにして、政治家をひっぱたたくために使っています。政権与党を叩いて引きずり下ろすの繰り返しで、たぶん今年の夏にある参院選でも同じことが起きるでしょう。みんな表面的には政治家を軽蔑しているのに、救世主のように政策一発で救ってくれる天才的な政治家を期待している。そういうヒーローが出てこないからぶっ壊す。政治にアンビバレントな子どもっぽい願望を持つのは止めた方が良いと思うんですよ。政治家に対する見方が幼いなと感じます。政治に出来ることなんて限られているんですから。

--政治にできることはなんでしようか。

石田:大ざっぱに二つしかない。税金で集めたカネを配ることと戦争です。カネと命を握っているのが怖いところでもあるんですが。お金の配分しかできない人たちが、国民を豊にするとか日本企業の価値を高めるとか出来ないんですよね、基本的に。それは僕ら自分たちの仕事でしょ。だから景気よくしてくれとか、日本経済をなんとかしてくれとか、政府に頼むのはお門違いですよ。

--一方で前回の衆院選では見られなかった「第三極」という現象もありました。

石田:日本維新の会はぶれたのが大失敗でしたね。政策も人事もツキハギだらけでフランケンシュタインのよう。もともと彼らは東京へのルサンチマン、地方公務員へのルサンチマンで人気を集めてきた。ダイナモになっているモーターが「嫉妬」なんです。それだけでうまくいくとは思えないなあ。

 維新の会は「地方分権にすればよくなる」と言っていますが、ないお金は出てこないからね。地方分権で貧しくなるのは、補助金がないと食えない地方ですよ。国もお金がないのでどうシステムをいじっても一緒で、民主党の予算の組み替えと同じであり得ない。

 あと橋下さんがよくやる記者バッシングはやめませんか。小沢一郎さんぐらいから始まったと思うんだけれど、自分より立場の弱い人間をつかまて「勉強してから出直してこい」というのダメです。じゃ、維新の会から今回立候補した人たちはみんな今日本が抱えている問題について知っているんですか? 「勉強してから立候補しろ」っていえますよ。お互い様じゃないですか。全ての人にわかりやすくきちんと答えられるというのが政治家の能力なので、すぐ激高して記者とバチバチ喧嘩するといのうは人間として品性が良くないので止めた方がいい。

--安倍政権になって、日本の右傾化を心配する意見もあります。

石田:今のポーズだけで僕は全然心配していません。「愛国教育」とか「毅然たる外交」とか、年寄りが好きなブリキのおもちゃですよ。右傾化した姿勢は自民党保守派の一生の夢なんでずっと言いづけるだろうけれど、実際にそんな政策を現職(の総理大臣)になってやれば阿呆ですよ。尖閣諸島の問題も中国と密約を結んで、かつてのように自分たちの領土だと言い合いながら棚上げしてしまえばいいんですよ。

 ただどちらにしても「政治が日本を変える」という幻想は捨てた方が良いですね。それと同時に政治家を軽蔑するという姿勢も止めた方がいいなあ。お互い嫉妬したり軽蔑したり、そういう浅い理解というか、仮想敵を作ってすぐ憎むという気分はそろそろ捨てた方が良いと思いますね。

 僕らはいま知の力とか頭の良さを武器として振り回しすぎています。ちょっと自分の身体、経験に戻って考えた方が良いんじゃないですか。わからないこととか、考えても仕方ないことは「考えない」と、仏陀も言っています。

 僕らは目の前のことを生きるしかない。恋をして子供を作って目の前の仕事を頑張っていれば、あとはいいんだよね。政治家は僕らが食わしているオマケですから。税金は収入以上取られることがないでしょ。お布施してあげて、政治家と公務員を食べさせている。彼らが日本をダメにしているとかいうまえに、自分らが頑張ればいいんだよね、政治を食わせられるぐらい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

国際ジャーナリスト・落合信彦氏
【訃報】国際ジャーナリスト・落合信彦氏が死去、84歳 独自の視点で国際政治・諜報の世界を活写 
NEWSポストセブン
元日に結婚を発表した女優の長澤まさみ(時事通信フォト)
長澤まさみ「カナダ同伴」を決断させた「大親友女優」の存在…『SHOGUN』監督夫との新婚生活は“最高の環境”
NEWSポストセブン
薬物で急死した中国人インフルエンサー紅紅(左)と交際相手の林子晨容疑者(右)(インスタグラムより)
「口に靴下を詰め、カーテンで手を縛り付けて…」「意識不明の姿をハイ状態で撮影」中国人美女インフルエンサー(26)が薬物で急死、交際相手の男の“謎めいた行動”
NEWSポストセブン
晩餐会に出席した真美子さんと大谷(提供:soya0801_mlb)
《真美子さんとアイコンタクトで微笑み合って》大谷翔平夫妻がファンを驚かせた晩餐会での“サイレント入退場”「トイレかなと思ったら帰っていた」
NEWSポストセブン
畠山愛理と鈴木誠也(本人のinstagram/時事通信)
《シカゴの牛角で庶民派ディナーも》鈴木誠也が畠山愛理の肩を抱き寄せて…「温かいご飯を食べてほしい」愛妻が明かした献身性、広告関係者は「大谷&真美子に引けを取らないパワーカップル」と絶賛
NEWSポストセブン
最新情勢をもとに東京の30選挙区の当落を予測した(時事通信フォト)
【2・8総選挙「東京1〜10区」の最新情勢】公明の連立離脱で現職閣僚が落選危機か 自民の優勢が伝えられるなか中道の前職がリードする選挙区も
NEWSポストセブン
第74回関東東海花の展覧会を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2026年1月30日、撮影/JMPA)
《雪の精のよう》佳子さま、ゴールドが映える全身ホワイトコーデに上がる賞賛の声 白の種類を変えてメリハリを出すテクニック
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせインフルエンサー、ボニー・ブルー(TikTokより)
《あなたが私を妊娠させるまで…》“12時間で1000人以上と関係を持った”金髪美女インフルエンサー(26)が企画を延期した真相に「気色悪い」と批判殺到
NEWSポストセブン
イラク出身のナディア・ムラドさん(EPA=時事)
《ISISに囚われた女性が告発》「お前たちは “奴隷” になるためにいる」「殴られ、唾を吐きかけられ、タバコの火で焼かれた」拉致された末の“生き地獄”の日々とは
NEWSポストセブン
ハナ被告の相次ぐ麻薬関連の容疑は大いに世間を騒がせた(Instagramより。現在は削除済み)
《性接待&ドラッグ密売の“第2の拠点”をカンボジアで計画か》韓国“財閥一族のミルク姫”が逮捕、芸能界の大スキャンダル「バーニング・サン事件」との関連も指摘
NEWSポストセブン
アワードディナーに初めて出席した真美子さん(提供:soya0801_mlb)
《鎖骨見せワンショルで“別人級”》大谷翔平の妻・真美子さん、晩餐会ファッションで見せたジャパン推しの“バランス感覚”【専門家が解説】
NEWSポストセブン
サンシャインシティ文化会館を訪問された佳子さま(2026年1月30日、撮影/JMPA)
《メイク研究が垣間見える》佳子さま、“しっかりめ”の眉が印象的 自然なグラデーションを出す描き方、ナチュラルなアイシャドウやリップでバランスも
NEWSポストセブン