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ブーム再来のプロレス 動員数水増しから決別は大英断と識者

「主催者発表」の数字ほど、日本では信用出来ないものはない。その「サバ読み文化」にあるスポーツ団体が決別した。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が決断にエールを贈る。

 * * *
 突然ですが、皆さん「1.4(イッテンヨン)」って何の意味だと思います? これが分かる人は、プロレスファンでしょう。毎年、1月4日に新日本プロレスが東京ドーム大会を開くのです。プロレスファン、特に新日ファンにとって「1.4」は、仕事始めであると同時に、「プロレス始め」でもあるのです。正月のこの日の東京ドーム大会は1992年に始まりました。一時は大会名が「闘強導夢」という実にプロレス的な名前でしたが、2007年より「レッスルキングダム」に変わりました。

 いまや、プロレスは何度目かのブームだと言っていい盛り上がりです。今年もこの日に開催された「レッスルキングダム7 ~EVOLUTION~ IN 東京ドーム」は豪華カードと素晴らしい試合内容でファンを熱狂させました。

「100年に1度の天才」と呼ばれるIWGP世界ヘビー級王者棚橋弘至と、元同王座チャンピオンであり、昨年夏のリーグ戦G1クライマックスを制した「レイン・メーカー」ことオカダ・カズチカが挑戦。PRIDEなど総合格闘技で活躍した桜庭和志がIWGPインターコンチネンタルヘビー級王者の中邑真輔と一騎打ち。タッグマッチでボブ・サップと曙が対決など、話題のカードが目白押しでした。特に中邑真輔対桜庭和志は早くも今年のベストバウトではないかと、高く評価されました。

 さて、この大会の動員数はどうだったのでしょう。2万9000人でした。前年が4万3000人、ドーム大会の全盛期だと言われた1990年代は毎回6万人くらい入っていました。それに比べると少なく感じるでしょうけど、でも、会場に行った人は「ここ数年で一番入っていた」と言います。

 何があったのでしょう?

 実はこの大会から、動員数を発表する指標を変更したのですね。2万9000人は「有料入場者数」でした。昨年まではスポンサーへの招待券、社員が必死に売った手売りのチケットなども含まれており、実際に来場しなかった人なども含み発表していたのでした。今回は文字通りお金を払って実際に入場した人の数です。

 これは英断だと思います。というのも、プロレスの入場者数の主催者発表はサバ読み、水増しが横行し、かなり前から信用できないものになっていました。ガラガラの会場なのに5000人(満員 主催者発表)などと言われても、しらけるだけです。ちゃんと超満員になった大会でも、明らかに定員よりも多い数を発表していたこともありました。

 日本武道館を例に言うと以前は1万6300人で超満員という発表がされていたこともありました。日本武道館のホームページで確認してみましたが、アリーナに席をいっぱいに設置したとしても1万4471席だとか。プロレスはリングと入場通路を用意しなければなりませんから、1万6300人なんて無理ですよね。立ち見を入れたとしても厳しいでしょう。

 この手のサバ読み、水増しは一時のプロ野球も酷かったのですけどね。

 まあ、もともとサバ読み、水増し文化はプロレスにありがちなことではあります。私がプロレスを会場で見るようになってから驚いたのは、身長です。パンフレットには185センチと書いてあるのですが、入場通路にレスラーを見に行ったら、明らかに約170センチの私と同じ身長なのですよ。最近では背が低いレスラーもたくさんいますし、ファンがついていますけどね。

 プロレスがこのような、正直な発表に踏み切ったことは大英断です。プロレスですらこうなんですから、セルフブランディングに一生懸命な意識高い系の人達も等身大でいきましょうよ、ええ。

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