国際情報

中国人 “裏道”から本家Twitter、Facebookへのアクセス急増

 6億人に迫ると言われる中国のネットユーザー。有事に彼らはどう行動するのか。検閲でコントロールできなくなった時、何が起きるのか。ジャーナリストの柏木理佳氏が解説する。

 * * *
 これまで中国では、本家本元のツイッターやフェイスブックなど海外SNSへのアクセスが禁止され、そっくりに作られた中国版ツイッターや中国版フェイスブック(人人網)を利用するしかなかった。中国版サービスは政府の管理下にあり、反政府的な書き込みやアカウントの削除からサービスそのものの停止まで自由自在にできた。しかし、その状況も変わりつつある。

 米メディアのブルームバーグの報道(2012年9月27日付)によれば、中国国内から本家の米フェイスブックにアクセスするユーザーの数は、2009年に790万人だったものが6350万人に、米ツイッターのユーザー数は2009年から3倍増の3550万人に達したという(米グローバルウェブインデックス調査)。中国版サービスの億単位のユーザーに比べれば少ないが、政府の統制を避けようと“裏道”を使って本家のサイトにアクセスする層が急激に増えている。

 中国には外資系企業向けにネット規制回避法をアドバイスするコンサルティング会社が多数存在するほどで、アクセス制限を回避する方法が次々に編み出されている。海外SNSであれば検閲を受けず、自由に情報交換できる。

 こうした状況を考えると、仮に日中間で尖閣諸島を巡る軍事的衝突などの「戦争」が起きた場合、中国政府がネット世論とそこから巻き起こる現実世界の動きを完全に統制するのは難しい。さまざまなパターンが考えられるが、最も問題になるのは、「日本が緒戦に勝利して中国が劣勢に立たされた場合」であろう。

 前述の通り、海外SNSにこれほどの数の中国人がアクセスしていれば、政府が戦況情報を完全に隠し通すことは不可能である。日中戦争で日本に蹂躙されたことは多くの中国人にとってトラウマであり、経済大国になってようやく自尊心を取り戻しつつあるのに、また日本に負けるとなればネット世論が「反日」で燃え盛るのは明白である。

 ことは反日では収まらない。怒りの矛先はだらしない人民解放軍、すなわち中国共産党に向かうだろう。反日デモの際にも毛沢東の肖像画や「自由、民主、人権」と書かれた横断幕を持ち込み、格差を拡大させた政府批判に転化させようとした層がいたが、反日から反政府への転化は中国政府が最も警戒するところだ。

 政府批判に転換させたい層は分厚い。上海や北京などの大都市部では、欧州危機などの影響で地方からの出稼ぎ労働者が仕事にあぶれ、故郷に戻りつつある。中国公安部も地方の内陸部では年に何万件も暴動が起きていることを認めているが、そこへ失業した出戻りの労働者が合流する。彼らの中にはインテリのホワイトカラーもいるし、就職先がなかった学生もいて海外SNSで情報交換する者もいる。従来の検閲・規制が利かない。

※SAPIO2013年2月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト