ライフ

公園の受動喫煙裁判 判決は「非喫煙者が喫煙者から離れよ」

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「わが家の前が喫煙エリア。たばこの臭いがたちこめ困っています」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 私の家は公共の喫煙エリアの真正面にあります。周囲は禁煙エリアで違反者は罰金を徴収されるため、わが家の前の喫煙エリアで喫煙する人が多いわけですが、風向きによっては煙が家を直撃し、ベランダでは洗濯物が干せません。たばこ臭くなるからです。喫煙者に対して規制はできないですか。

【回答】
 喫煙者に文句をいうより、喫煙エリアを管理している役所に対処を求めるべきでしょう。禁煙条例等で一定の地域を禁煙とし、違反すると罰金を取るという自治体が増えています。そうした自治体が喫煙者のために、灰皿を置いて喫煙スペースを設けることもあります。

 そもそも路上喫煙などを禁止するのは、事故の防止や、投げ捨てられた吸い殻などによって街の美観が損なわれないようにするだけでなく、いわゆる受動喫煙による健康被害への配慮もあります。

 学校、百貨店、飲食店など多くの人が利用する施設の管理者に受動喫煙防止の努力義務を課している健康増進法では、受動喫煙とは室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることとしています。そのため公園や道路上での喫煙は、この法律の受動喫煙の範囲には入りません。

 条例で路上喫煙を禁止していながら、公園で灰皿を置いて喫煙スペースを認めて禁煙としないのは役所の怠慢だと、裁判を起こした人がいます。この事件で裁判所は、受動喫煙の右の趣旨も引用しつつ、公園や屋外の施設で喫煙をしない利用者は、喫煙者から離れた場所に移動して煙草の煙を避けることができることなどを理由に、役所の責任を否定しています。

 しかしあなたの場合は、逃げるわけにはいかない自宅に、喫煙スペースから煙が流れ込み、洗濯物が臭くなるほどとのこと。健康被害の心配もあります。役所が設置した施設によって、周囲の住民の身体・生命を侵害するようなことはあってはならず、本件では喫煙スペースの設置・管理に瑕疵(かし)があるといえそうです。

 その結果、あなたの家族の健康に支障が生じれば賠償責任も生じます。そこで役所に、喫煙所の移転や排煙装置の設置など適切な管理をするように申し出て、協議してください。

※週刊ポスト2013年1月25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン