芸能

関根勤の芸のルーツは給食食べきるまで帰れなかった小学時代

 松田哲夫氏は1947年生まれ。編集者(元筑摩書房専務取締役)。書評家。浅田彰『逃走論』、赤瀬川源平『老人力』などの話題作を編集。1996年からTBS系テレビ『王様のブランチ』・書籍コーナーのコメンテーターを12年半務めた松田氏が、共演者のタレント、関根勤さんがコメディアンになったきっかけについて語る。

 * * *
 ある日、新宿の中村屋で詩人の茨木のり子さんたちと食事をしていると、偶然、近くの席にいた関根さんがぼくのところに挨拶にきてくれた。そこで、「こちらは『倚りかからず』の茨木のり子さん」と紹介した。関根さんが、自分の席に戻った時に、茨木さんが「実は、わたし、ラビット関根時代からファンなの」と嬉しそうにつぶやいたのだった。

 ラビット関根時代といえば、そのころ師匠の萩本欽一さんに「お前の芸はクドい」と言われたそうだ。そこで、テレビではソフトな笑いを演じる「表関根」に、ラジオや深夜番組ではクドい「裏関根」となった。

 そして、毎年、座長になって「クドい!」という舞台を23年間続けている。ぼくも半分近く観ているが、関根さんが言うように、ダジャレ、シモネタ、悪ふざけ満載のとことん品のないものなのだ。でも、その舞台を楽しんでいる関根さんを観ていると、ぼくたちも幸せな気分になる。

 笑いの芸についても、本を読んだ感想についても、他人にどう思われようが、自分の判断を貫き通す芯の強さはどこからくるのだろうか。ある時、関根さんがコメディアンになったきっかけを話してくれたのだが、そこにひとつの答えがあるような気がした。

 関根さんは、年寄りっ子の末っ子で、甘やかされて育った。家では好きな物しか食べないので、給食がほとんど食べられなかった。そのために、大正生まれの担任の女性教師に小学2年から5年までしごかれた。食べ終わるまで、掃除中も放課後も、他の先生が「帰れ」と言ってくれるまで、給食の前から離れられない。そういう毎日が4年間続いた。

 その時の暗い気持ちを払拭するために、家に帰るとお笑い番組を食い入るように観て、「こういう人になりたいなあ」と憧れるようになったという。

※週刊ポスト2013年2月8日号

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