4月1日から事実上の「65歳定年制」が導入される。改正高年齢者雇用安定法の規定によって、会社は社員が希望すれば65歳まで雇用しなければならなくなるのだ。
サラリーマン文化への鋭い考察で知られるコラムニストの石原壮一郎氏は、65歳定年制で企業の風通しがいっぺんに悪くなると語る。
「就職氷河期以降に入社した20代や30代の若手サラリーマンは、やっと手にいれた正社員の座を手放したくないから目立つことはせず、余計なこともいわないで与えられた仕事を淡々とこなす。
その点、定年間際の経験豊富なベテラン社員は、上役の顔色をうかがう必要もないから会社に思い切ったことがいえる。年配社員の一暴れで会社の風通しがよくなり、社員のやる気や経営改善につながることはよくあった。
しかし、いまや定年後も働かなくては食えないし、再就職口を見つけるのは難しい。だから年配者も少しくらいの不満は我慢して60歳まで勤め上げて65歳までの継続雇用の特典を得ようと会社にしがみつかなければならない。社員はどんどん牙を抜かれて企業は活性化しない。この制度は年配社員の最後の一暴れ、会社へのご奉公の機会を国が奪うものですよ」
※週刊ポスト2013年2月8日号