国内

補正予算で日本原研へ800億円に元経産官僚“酷い”の一言

 安倍政権下で原発推進路線が急速に動き出している。
 
 アルジェリア人質事件にかき消された形になっているが、安倍首相はASEAN(東南アジア諸国連合)歴訪の際、ベトナムのズン首相との会談で、中断している原発輸出を進展させることで合意した。

  奇妙なのはそれに対する大メディアの報道ぶりだ。朝日新聞は野田前政権がベトナムとの原子力協定を国会承認した際、社説で〈ベトナム支援 原発輸出は考え直せ〉(2011年11月2日付)と厳しく批判していた。ところが、今回の安倍首相の合意については〈「強い経済」を掲げ、アジアの成長の取り込みを狙う安倍首相も、原発輸出の路線を受け継ぐことにした〉と一転して容認姿勢なのだ。

  原発批判派の大新聞が権力監視をしなくなったと見るや、早速、原発マフィア官僚たちが跋扈しはじめた。

  経産省は国会で審議中の補正予算に、天下り先の独立行政法人「日本原子力研究開発機構」への800億円もの出資を盛り込んだ。同機構は高速増殖炉もんじゅを運用し、核燃料サイクルの技術開発を行なっている原発推進機関だ。

  政府は復興予算で福島県に放射能研究拠点をつくる事業を進めており、193億円の事業費を組んで施設建設を進めている。そこには環境省の『国立環境研究所』『国際原子力機関(IAEA)』などの研究所と並んで日本原子力研究開発機構も研究所を置くことになっており、800億円はその費用である。

  元経産官僚の岸博幸・慶應義塾大学大学院教授が指摘する。

 「この事業は原発事故の被害を受けた福島を復興させるという触れ込みだが、中身は“酷い”のひとことにつきる。日本原子力研究開発機構が新たに整備する2つの研究拠点の目的は、放射能の分析と遠隔操作ロボットの研究開発になっているが、前者は本来、事故を起こした東京電力が自前で行なうべき除染や廃炉の研究です。それを税金を使って独立行政法人にやらせる。東電の肩代わりといっていい。

  もうひとつのロボット開発は放射能とも原発とも関係ない。すでに大学や民間企業がロボット開発を進めており、わざわざ機構にやらせる事業ではない。明らかにシロアリ官僚が天下り先の焼け太りを狙ったものです」

  原発推進派は事故の反省もなく、逆にほとぼりが冷めたと見て福島の除染まで天下り先のメシのタネにしようとしているのである。

※週刊ポスト2013年2月15・22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
国仲涼子が語る“46歳の現在地”とは
【朝ドラ『ちゅらさん』から24年】国仲涼子が語る“46歳の現在地”「しわだって、それは増えます」 肩肘張らない考え方ができる転機になった子育てと出会い
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン
インフルエンサーの景井ひなが愛犬を巡り裁判トラブルを抱えていた(Instagramより)
《「愛犬・もち太くん」はどっちの子?》フォロワー1000万人TikToker 景井ひなが”元同居人“と“裁判トラブル”、法廷では「毎日モラハラを受けた」という主張も
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志容疑者、14年前”無名”の取材者として会見に姿を見せていた「変わった人が来るらしい」と噂に マイクを持って語ったこと
NEWSポストセブン
千葉ロッテの新監督に就任したサブロー氏(時事通信フォト)
ロッテ新監督・サブロー氏を支える『1ヶ月1万円生活』で脚光浴びた元アイドル妻の“茶髪美白”の現在
NEWSポストセブン
ロサンゼルスから帰国したKing&Princeの永瀬廉
《寒いのに素足にサンダルで…》キンプリ・永瀬廉、“全身ブラック”姿で羽田空港に降り立ち周囲騒然【紅白出場へ】
NEWSポストセブン
騒動から約2ヶ月が経過
《「もう二度と行かねえ」投稿から2ヶ月》埼玉県の人気ラーメン店が“炎上”…店主が明かした投稿者A氏への“本音”と現在「客足は変わっていません」
NEWSポストセブン
自宅前には花が手向けられていた(本人のインスタグラムより)
「『子どもは旦那さんに任せましょう』と警察から言われたと…」車椅子インフルエンサー・鈴木沙月容疑者の知人が明かした「犯行前日のSOS」とは《親権めぐり0歳児刺殺》
NEWSポストセブン
10月31日、イベントに参加していた小栗旬
深夜の港区に“とんでもないヒゲの山田孝之”が…イベント打ち上げで小栗旬、三浦翔平らに囲まれた意外な「最年少女性」の存在《「赤西軍団」の一部が集結》
NEWSポストセブン
スシローで起きたある配信者の迷惑行為が問題視されている(HP/読者提供)
《全身タトゥー男がガリ直食い》迷惑配信でスシローに警察が出動 運営元は「警察にご相談したことも事実です」
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月10日、JMPA)
《初の外国公式訪問を報告》愛子さまの参拝スタイルは美智子さまから“受け継がれた”エレガントなケープデザイン スタンドカラーでシャープな印象に
NEWSポストセブン