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アルジェ事件 首相の「米の支援を受けたら…」は恥との指摘

 1月16日、イギリスのBPなどによる合弁企業が経営するアルジェリアの天然ガス精製プラントが、テロリストに襲われ、40人以上の外国人を含む200名近くが人質となった。このプラント建設には、日本の企業、日揮も参加しており、多くの日本人が巻き込まれ、うち10名が亡くなった。作家の落合信彦氏は、安倍晋三首相がアルジェリア首相にかけた電話の内容は、日本政府の時代遅れな姿勢を端的に表していると指摘する。

 * * *
 アルジェリアの天然ガス精製プラントでのテロ事件で明らかになったのは、国際社会における「アメリカのプレゼンスの低下」である。事件対応ではイギリス首相のキャメロンやフランス大統領・オランドのほうが存在感を見せていたことが象徴的だった。

 奇しくもアメリカ大統領・オバマの2期目の就任式のタイミングで今回の事件は起きたが、オバマ再選に象徴されるように、アメリカは「内向き志向」を強めている。かつての「世界の警察官」としての地位を放棄しようとしているのだ。アフガニスタンからの撤退にしてもそうだが、他国には干渉したくない、という姿勢に変化している。

 世界はその変化に敏感に反応している。アルジェリア政府も、「アメリカの介入で解決してもらえる」などとは微塵も考えていなかった。だが、ここでも日本だけが取り残されている。

 安倍はアルジェリア政府が攻撃を開始した後に、首相のセラルに電話をかけて、 「アメリカの支援を受けたらどうなのか」と迫ったというが、“アメリカ頼み”の姿勢をこれほど端的に示した恥ずかしいセリフもないだろう。他国に頼っているだけの指導者から偉そうに口を挟まれても何の説得力もない。私がアルジェリアの首相だったら即刻電話を切っていたと思う。

 安倍は就任直後からオバマとの日米首脳会談の設定に躍起になっている。「アメリカが守ってくれる」という考えの表われだが、その前提が過去の遺物となりつつあるのだ。自前の情報を持ち、自ら決断を下せる国家でなければ、勝ち残れない時代なのである。

 対テロ戦争への危機感の欠如、諜報機関の絶対的必要性、アメリカ頼みの外交戦略の限界今回の事件は、日本人が多くのことを学ぶチャンスである。海外で起きた事件は特に、すぐ風化してしまう傾向があるが、優秀な日本人技術者の死を無駄にしないためにも、時代遅れの考えから脱却した一人前の国家への第一歩を踏み出さなければならない。

※SAPIO2013年3月号

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