国内

日本は閉鎖経済から脱却できず20年以上低迷続いたと大前氏

 なぜ日本だけが長い不況のトンネルをいつまでも脱することができないのか。大前研一氏は、その根本的・構造的問題を考えなければ安倍政権が経済を真に復活させることはできないと指摘する。

 * * *
 日本経済の最大の問題点は、未だに〝閉鎖経済〟であるということで、その象徴は金融の仕組みである。1500兆円とも言われる個人金融資産が銀行、郵便貯金(現・ゆうちょ銀行)、生命保険に滞留して市場に出てこない。

 銀行は「経済の心臓」であり、お金という経済の血液を循環させる機能を担っているはずだが、日本の銀行の場合は循環機能を放棄してお金を滞留させている。国民から預かった資金を大量に日銀へ預け、さらに日本国債を買いまくり、それらを「運用」と称している。国債を買い続けるという意味では、国家の”生命維持装置”になり下がっている。これでは投資を活性化することなどできない。市場にお金が出てこなければ、景気も上向くことがない。

 小泉政権の時は「大蔵省(財務省)vs郵政省(総務省)」の構図の中で、大蔵族の小泉首相が、利権のためとはいえ曲がりなりにも郵政3事業を民営化(しようと)した。

 しかし、今は財務省も「ゆうちょから資金が流出すれば、国債の買い手がいなくなる」と考えているようで、日本郵政の社長には、旧大蔵事務次官の斎藤次郎氏に続き、同じく大蔵OBの坂篤郎氏を送り込み、ゆうちょを守ろうとしている。つまり財務省の考え方は180度変わってしまい、小泉改革は跡形もなくなって閉鎖的な過去(日本郵政の再国営化)に戻っている。

 農業などの利権団体が牛耳っている領域も依然として閉鎖的だ。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に反対しているのはそうした勢力だが、日本経済全体から見ると、利権団体が牛耳っている領域はコメやコンニャクなど非常に小さくなっている。

 それに、牛肉、オレンジ、サクランボなど過去に日米貿易戦争で標的となったケースを振り返れば、市場を開放しても結果的に日本の農業や畜産業は脅かされていない。

 こうして見てくると、日本はこれまで20年以上、規制緩和が進まず閉鎖経済から脱却できないために低迷が続いてきたことがわかる。安倍首相が小手先の政策を繰り出しても、この根本的・構造的問題を解決しなければ、経済の真の復活はありえないだろう。

※SAPIO2013年3月号

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン