スポーツ

レスリングの五輪除外 混迷極めるプロレスに重大影響と識者

 4月1日から60歳の定年後も希望者全員を雇用することを企業に義務づける改正高年齢者雇用安定法が施行される。働き方の「出口」の在り方について、作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が考える。

 * * *
 キャリアを考える上では、企業や職業への入口と、そこからの出口について考える必要があります。アスリート、中でもアマレス、プロレスを例に考えてみましょう。特殊な事例のようで、私達に対する教訓があるのです。

 アスリートのキャリアの問題といえば、いつまで競技を続けるか(られるか)、そして引退後のセカンドキャリアです。新卒の就活に強いと評判の体育会系ですが、アスリートの明日は、実に不透明です。

 ここ数ヶ月、体育会系学生およびOB・OGの取材をしていました。しかも、日本トップクラスの人たちです。スポーツ選手のセカンドキャリアについて考えていました。トップクラスの体育会系学生は、進路に悩むのです。ずばり、プロに進むか、仕事をしながら企業チーム、クラブチームなどで続けるか、完全に引退するかの選択を迫られます。

 プロになったらなったで、いつまで続けられるのか、引退後、どうやって食べていくかという問題があります。本人の能力や意思もそうですが、そもそも進路の選択肢があるかどうかという問題があります。

 関連しますが、一方で選手になってくれる人がいるのかという問題もあります。そのスポーツに優秀なアスリートやその予備軍がやってくるかどうかという問題です。ここには、スポーツとしての盛り上がりや、食べていけそうかどうか、引退後の道が用意されているかなどが関係します。

 実はいま、この問題が静かに、いや、着実に燃えているのがプロレスなのです。

 まず、団体の分裂劇、オーナー交代劇です。メジャー団体といわれるノアから、エースの一人秋山準や、次期エースと言われた潮崎豪などが離脱して、全日本プロレスに参戦しました。

 その全日本プロレスも、オーナーが変わりました。そのオーナーがライバル団体の新日本プロレスを挑発したり、選手と対立したりと、どこまで本気なのかネタなのか、わからない展開になり、混乱しています。3月19日付の東スポの報道によると、先日の両国国技館大会では、最後にオーナーが挨拶した際には、怒号が飛び交い、一部ではモノを投げつけるファンまでいたとか。オーナーは巨額の資金を投入し、テコ入れをはかるそうですが、先行きは不透明です。何しろ、ファンが本気で怒っているようなのが気になります。ファン離れにつながらなければいいのですが。

 さらに連動するのが・・・。既に報道された通り、2020年よりオリンピックの種目からアマレスがはずされる可能性が出てきたことです。故・ジャンボ鶴田、故・三沢光晴、マサ斎藤、長州力、秋山準、桜庭和志、中邑真輔、棚橋弘至、後藤洋央紀、柴田勝頼、矢野通・・・。多くの人気レスラーがアマレス出身です。

 アマレスがオリンピックから外れること、また、プロレス団体が混迷を極めていることが、負のスパイラルにつながりそうなことは明らかです。競技人口がへり、優秀なアスリートがプロレスにやってこなくなる、プロレスラーになるためにまずはアマレスをやるという人が減る、さらにはアマレス出身者の再就職先も減る・・・・。まさに負のスパイラルではないですか。アマレス、プロレス、それぞれのファンは、もっと怒った方がいいと思います。

 このように、アスリートのセカンドキャリア問題は根深いのです。プロレス団体の迷走、アマレスをオリンピックからはずす動きも、実は個々人のキャリアに関わる問題なのです。

 やや特殊な例でいて、私達にとってもそうです。皆さんの業界や企業は若者が働きたいと思うような就職先と言えるでしょうか。そして、40歳定年制や改正高年齢者雇用安定法により高齢者の雇用を継続する動きもあり、定年をめぐる議論や解雇規制緩和などの議論が盛り上がっていますが、自分たちの出口をどう考えるかというのも考えなければならない問題です。アマレスやプロレスのファン以外も、キャリア問題の一ケースとして捉えるべきでしょう。

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