ビジネス

ドイツ車が日本でよく売れるのは国産に高揚感ないからと識者

 ハイブリッド車のヒットやEV(電気自動車)の話題性、アベノミクスによる高額消費の風潮などで明るい展望も見え始めている国内の自動車市場。だが、2012年度は輸入車比率が過去最高の7.5%(販売台数24万3000台)を記録しそうな勢いで、じわじわと外車人気も高まっていることがうかがえる。

 日本の外車人気を支えているのは、フォルクスワーゲン(VW)、BMW、メルセデス・ベンツ、アウディの4強で輸入車市場の75%も占めるドイツ車。庶民には手の届かない高級車イメージも強いドイツ車ばかりがなぜ売れるのか。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏に聞いた。

 * * *
 よくドイツ車が売れるのは、富裕層を中心に輸入車信奉が強いからとかいわれますが、決してそんなことはありません。最近の売れ筋は、VWの『up!(アップ)』やアウディの『A1』シリーズ、メルセデスの『Aクラス』など小型車が中心。もちろん同格の国産車より価格は高めでも決して手の届かない金額ではありませんしね。

 つまり、日本車メーカーは「価格は高くてもいいから、少しでも変わったデザインの車が欲しい」というユーザーの潜在的なニーズに商品企画で応えられていないのです。特に近年はコスト競争に執着する余り、“個”に対応する独創性をどんどん失っているように思います。

 ドイツメーカーの開発者たちは、車の曲線からインテリアの細部に至るまで、どうすればカッコ良い車になるかとことん追求します。飛行機や腕時計などからデザインのヒントを借りてきたり、高級なシート素材や家具調のパネルをふんだんに取り入れたり……。逆にわざと無機質でシャープなデザイン演出をすることだってあります。

 そうしてドイツ的な美的感覚で作られた車を日本に持ってくると、目新しく斬新に映り、本国では思いもよらないプレミアム性がついて高く売れるわけです。

 ただ、トヨタの高級車ブランド、レクサスの『ES』が同格のアウディ『A6』よりずっと高品質で低価格で売られているのに、輸入車と比べて価格競争力がないと思われてしまうぐらいにしかブランド力がないのは残念です。

 日本メーカーのデザイナーはじめ開発者だって、こうすればもっとオシャレで上質な車ができるというノウハウは持っています。

 昨年来、爆発的にヒットしているホンダの軽自動車『N―ONE』は、開発責任者の浅木泰昭さんが「こんな高い部品を軽自動車に使えるか」といった若手の提案を次々と採用して、プレミアムな軽自動車に仕上げました。テールランプやバンパーの形状までこだわった結果、「ホンダはこんなかわいらしい車も作れるんだ」とブランドイメージの向上につながりました。

 もう大量に安くつくることだけに邁進する時代ではなく、コストの差よりも価格差で大きな利益を得られるよう工夫すべきなのです。

 そこで日本メーカーはいまだに燃費の良さなどに一生懸命レーゾンデートルを持ちがちですが、そんな性能はユーザーにとっては当たり前。粛々とやればいいだけで、もっと「こんな車でこんな喜びを皆さんに与えます」と強烈なメッセージの込められた車を作って欲しいです。「この車がガレージに収まっているとワクワクする」、「ワケもなく気分を変えてドライブに行くたくなる」といった高揚感のある車です。

 もちろん、どんなにいい車を作っても販売力がなければ売れません。ディーラーを覗いてみても、日本車よりドイツ車の販売店のほうがオシャレで購買欲をそそりますしね。

 ある日本メーカーのデザイン拠点も入っている研究所にスターバックスが出来たら、そこが一番オシャレな場所だったという話を聞きました。何百万円もする車を開発する場所より、数百円のコーヒーを売るスタバのほうがずっと高級感が漂っていた。決して笑えない話です。

 日本メーカーであることの証明を車で実現させる。日本におけるジャパンプレミアムとは何かを真剣に考える時期です。どこのメーカーとは言いませんが、年収数千万円のチーフエンジニアが面白くない車に乗って、研究所にこもり、理想的なカーライフを説く。こんな人材ばかりが増えれば、“クルマ離れ”は進むばかりです。

関連記事

トピックス

大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン
メキシコの有名美女インフルエンサーが殺人などの罪で起訴された(Instagramより)
《麻薬カルテルの縄張り争いで婚約者を銃殺か》メキシコの有名美女インフルエンサーを米当局が第一級殺人などの罪で起訴、事件現場で「迷彩服を着て何発も発砲し…」
NEWSポストセブン
「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年11月6日、撮影/JMPA)
「耳の先まで美しい」佳子さま、アースカラーのブラウンジャケットにブルーのワンピ 耳に光るのは「金継ぎ」のイヤリング
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン
「埼玉を日本一の『うどん県』にする会」の会長である永谷晶久さん
《都道府県魅力度ランキングで最下位の悲報!》「埼玉には『うどん』がある」「埼玉のうどんの最大の魅力は、多様性」と“埼玉を日本一の「うどん県」にする会”の会長が断言
NEWSポストセブン
受賞者のうち、一際注目を集めたのがシドニー・スウィーニー(インスタグラムより)
「使用済みのお風呂の水を使った商品を販売」アメリカ人気若手女優(28)、レッドカーペットで“丸出し姿”に賛否集まる 「汚い男子たち」に呼びかける広告で注目
NEWSポストセブン
新関脇・安青錦にインタビュー
【独占告白】ウクライナ出身の新関脇・安青錦、大関昇進に意欲満々「三賞では満足はしていない。全部勝てば優勝できる」 若隆景の取り口を参考にさらなる高みへ
週刊ポスト
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
《出所後の“激痩せ姿”を目撃》芸能活動再開の俳優・新井浩文、仮出所後に明かした“復帰への覚悟”「ウチも性格上、ぱぁーっと言いたいタイプなんですけど」
NEWSポストセブン
”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン