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別れた妻から娘の学費163万円要求 夫は全額負担必要あるか

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「娘の入学金や学費を全額負担せよとの通知。従うべきなのか」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 以前に養育費の相談が寄せられていましたが、私も同様の問題を抱えています。別れた一人娘が高校を卒業し、専門学校に入学することになり、元妻は入学金と1年間の学費163万円を支払えと通知してきました。これまで養育費は延滞したことはなく、それでも全額負担しなければいけませんか。

【回答】
 一概にいえません。あなたや元妻の収入、学歴、社会的身分によって違います。あなたが断わった場合、たぶん親権者と思われる元妻が、娘さんの法定代理人として、家庭裁判所に学費の支払いを求める扶養請求の調停を起こし、調停ができなければ家裁の審判を受ける事態になることが考えられます。

 民法で親子は互いに扶養する義務があり、協議が整わないときには民法第879条で「扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める」とされているからです。学費の負担なども、親子間の扶養の問題と考えられているのです。

 そこでもし、裁判所に持ち出されたらという仮定で考えましょう。親子間の扶養といっても様々で、未成熟児の場合と成人した場合では違います。娘さんの例のように、高校まで出したのだから、もう学資は要らないという考えもあります。もともと扶養とは、働けない状態にある要扶養者を扶養すべき者が扶養能力を持つ場合に生じる関係ですから、要扶養者が労働できる健康体であれば、扶養される必要はないといえるからです。

 しかし、昨今は大学進学など高卒後の教育が当たり前のようになっています。そして、一定の学歴やスキルの有無が就職の条件に大きな影響を与えます。子供が労働可能であっても、親の社会的地位から一定の学歴を経るまで働くことを期待できない場合、実際に学資等が不足すれば、親がこれを負担するのはやむを得ないという考え方が有力です。

 生活が困難ではないのなら、学資負担を検討されてはいかがですか。ただし、全額が妥当かは別です。全額負担の約束がなければ、元妻の収入も勘案し、負担割合を協議すればよいと思います。また、娘さんも奨学金を使うなど親の負担軽減を考えるべきでしょう。

※週刊ポスト2013年4月5日号

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