ビジネス

「バブル入社組は怒鳴られた経験がなく危機感が薄い」と大前氏

 新年度から「65歳定年制」の本格運用が始まる。この新制度導入によって、よりいっそう鮮明になる日本の“社員”たちに求められる資質について大前研一氏が解説する。

 * * *
 いよいよこの4月から「改正高年齢者雇用安定法」の施行により、希望者全員を65歳まで雇用する制度の導入が企業に義務づけられて「65歳定年制」がスタートした。

 私は以前「50歳定年制」を提案したが、今回の法施行で、すでに実質的な仕事がなくなっている50代の窓際社員は“生ける屍”のまま、これまでより5年も長く会社に居残ることになる。

 加えて、40代後半の「バブル入社組」も大きな問題だ。多くの企業で、この世代が大量にダブついている。彼らは、なまじっかバブル期を知っているから、未だに「それ行けどんどん」の勘違い社員が多い。

 そうなったのは、高度成長期を牽引した創業者社長たちと違って、無責任で人を育てない60代のサラリーマン社長や前述した自己評価が高い50代の上司の下にいたため、こっぴどく怒鳴られたり、全面否定されたりした経験がなく、自分の能力の限界を自覚していないからだ。したがって、総じて彼らは危機感が薄く、ゴルフでいえば前半で40も叩いているのに、なんとなくまだパー(72)で上がれるかもしれないと思っているのだ。

 しかも、給与水準が高い時代から勤めているので高給だ。そんな彼らが今の50代社員と同じように“窓際”になったら、そのコストで会社が潰れかねない。

 これまで日本の大企業は「大量生産・大量消費」時代の慣習が残っていたから、毎年数百人の新入社員を採用して毎年同じように教育し、社員の“平均値”を強化してきた。しかし、今やそういう金太郎飴社員は必要ない。

 これから必要なのはグローバルに活躍できる「際立った人材」「突出した人材」である。若手社員の中から精鋭を選び、音楽やスポーツのような“個人レッスン”で特訓をしないと、そうした人材は出てこない。

 バブル入社組は、そもそも人数も多い。その中でどれだけ「際立った仕事」「突出した仕事」ができるか、ということが問われる時代なのである。

※週刊ポスト2013年4月12日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン