ビジネス

アベノミクスの賃上げ 連合傘下の平均は前年比で月額51円増

 エイプリルフールの4月1日、新聞・テレビは「景気回復」を大きく報じた。

〈景況感 9カ月ぶり改善 円安・株高効果〉(朝日)
〈景況感 3期ぶり改善〉(読売)
〈日銀短観 製造業が3期ぶりの改善〉(NHK)

 ──その日発表された日銀の企業短期経済観測(日銀短観)を受けたもので、毎日、日経、産経も見事な横並びの見出しを並べた。

 財界からは全国銀行協会会長が、「アベノミクス効果が徐々に顕在化しつつある」とヨイショし、安倍内閣の菅義偉・官房長官は、「景気回復に向かうことが期待されている」と自画自賛した。

 ところが、景気回復の根拠とされた日銀短観の企業アンケート結果を見ると、製造業の業況判断指数はマイナス。景気が「良い」と答えた企業より、「悪い」と答えた企業の方が8ポイントも多いのだ。しかし大メディアは、前回の12ポイントから減ったことをもって「改善」と言い張った。しかもこれは大企業に限った話で、中堅・中小企業では景況観が悪化している。手の込んだ“4月バカ”だったのである。

 もっと罪深いのがサラリーマンに対する賃上げ幻想のふりまきだ。

 今年の春闘が始まる前、安倍首相は経団連など経済3団体に賃上げを要請し、大手企業の労使交渉では「満額回答が続出」と宣伝された。日経新聞は、〈組合員の平均年収の増加率は、安倍晋三政権が目指す物価上昇率目標の2%を軒並み超える見通しだ〉と予測し、サラリーマンは“今年こそは”と給料大幅アップの期待を大きく膨らませて例年より早い花見に酔った。

 現実はどうだったか。これから労使交渉の佳境を迎える中小企業のサラリーマンは、大企業の結果を知ると落胆するはずだ。

 連合はエイプリルフール翌日に大手企業の春闘回答(第3次集計)を発表した。それによると、傘下の1456組合の平均賃金引き上げ額は前年比でなんと月額「51円」の増加にすぎなかった。経営側は「アベノミクスに協力する」とあれだけお祭り騒ぎをしておいて、賃上げ効果がわずか51円ではサラリーマンは泣くに泣けない。

 業績急回復で業界全体で3兆円近い営業利益を見込んでいる自動車メーカーにしても、業績に連動する一時金を引き上げただけで、賃金アップは全くなかった。

※週刊ポスト2013年4月19日号

関連記事

トピックス

東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
渡邊渚さんが綴る「PTSDになった後に気づいたワーク・ライフ・バランスの大切さ」「トップの人間が価値観を他者に押しつけないで…」
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
ルーヴル美術館での世紀の強奪事件は瞬く間に世界を駆け巡った(Facebook、HPより)
《顔を隠した窃盗団4人組》ルーブル美術館から総額155億円を盗んだ“緊迫の4分間”と路上に転がっていた“1354個のダイヤ輝く王冠”、地元紙は「アルセーヌ・ルパンに触発されたのだろう」
NEWSポストセブン
活動休止状態が続いている米倉涼子
《自己肯定感が低いタイプ》米倉涼子、周囲が案じていた“イメージと異なる素顔”…「自分を追い込みすぎてしまう」
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン
“ムッシュ”こと坂井宏行さんにインタビュー(時事通信フォト)
《僕が店を辞めたいわけじゃない》『料理の鉄人』フレンチの坂井宏行が明かした人気レストラン「ラ・ロシェル南青山」の閉店理由、12月末に26年の歴史に幕
NEWSポストセブン
森下千里衆院議員(共同通信社)
《四つん這いで腰を反らす女豹ポーズに定評》元グラドル・森下千里氏「政治家になりたいなんて聞いたことがない」実親も驚いた大胆転身エピソード【初の政務三役就任】
NEWSポストセブン
ナイフで切りつけられて亡くなったウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(Instagramより)
《19年ぶりに“死刑復活”の兆し》「突然ナイフを取り出し、背後から喉元を複数回刺した」米・戦火から逃れたウクライナ女性(23)刺殺事件、トランプ大統領が極刑求める
NEWSポストセブン
『酒のツマミになる話』に出演する大悟(時事通信フォト)
『酒のツマミになる話』が急遽差し替え、千鳥・大悟の“ハロウィンコスプレ”にフジ幹部が「局の事情を鑑みて…」《放送直前に混乱》
NEWSポストセブン
『週刊文春』によって密会が報じられた、バレーボール男子日本代表・高橋藍と人気セクシー女優・河北彩伽(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
「近いところから話が漏れたんじゃ…」バレー男子・高橋藍「本命交際」報道で本人が気にする“ほかの女性”との密会写真
NEWSポストセブン