ビジネス

森永氏「アベノミクスの恩恵受けるのは大企業と資産家だけ」

 経済見通しをふまえたうえで先読み資産防衛術を紹介する『マネーポスト』の好評連載「森永卓郎のサバイバル資産防衛術」。森永氏は、7月参院選までは株高の流れが続くと分析しているが、その後はどうなるのか? 以下、森永氏が解説する。

 * * *
 7月以降の株価については、日銀がどこまで本気でデフレ脱却に取り組むか、にかかっていると思います。とはいえ、これまで金融緩和に消極的だった白川方明前総裁が辞任しただけでも、日本経済にとっては好材料です。

 もちろん、黒田東彦総裁の手腕次第となるでしょうが、積極的な金融緩和策がとられれば、7月までに日経平均株価は1万5000円を超える可能性すらあるでしょう。

 すでにABE(安倍・バブル・エコノミー)という声も聞こえてきますが、日本株はまだまだバブルと呼べる段階には遠く及びません。それどころか、これまで“逆バブル”ともいえる不当な水準まで売り込まれてきたのです。

 今年1月末の東証1部銘柄の平均PBR(株価純資産倍率)は1.1倍です。それに対して、先進国市場の平均PBRは1.9倍、小泉政権末期の2006年1月のそれも1.9倍でした。

 もしこれが世界水準並みに戻れば、計算上、日経平均は2万5000円になります。“逆バブル”の崩壊は驚くほど早い。デフレ脱却の暁には株価が劇的に上がるので、今後1年のうちにも、日経平均は2万5000円になってもおかしくないと考えます。

 さらに、日銀が本当に大幅金融緩和に踏み切れば、為替相場は勢いを増して円安に振れるので、裾野が広く日本経済に大きなインパクトを持つ輸出製造業は大きな恩恵を受けることになります。

 たとえば、1ドル=80円だった為替相場が120円になれば、輸入品の価格は単純計算で1.5倍になる。これまで家電量販店で売られる中国製家電の価格は日本製より3割ぐらい安かったのですが、そうなれば日本製の方が安くなり、中国家電はまったく売れなくなるはずです。さらには、円安で日本製品は海外でもバンバン売れるようになり、輸出製造業の業績は一気に急回復します。

 ただし、アベノミクスによって恩恵を受けるのは、そうした大企業と株価の上昇で潤う資産家だけとなる公算が高いです。デフレ脱却が図られたとしても、直ちに労働者の賃金が上がる環境にはないので、庶民の生活はすぐにはよくならないと思われます。

 アベノミクスが経済に及ぼす影響は、まさに小泉構造改革の再現なのです。小泉改革の5年間で株価は2倍、配当は3倍、大企業の役員報酬は2倍となりました。たしかに経済は成長したのですが、その一方で富の分配は庶民には及びませんでした。結果、いまだに尾を引く格差社会が顕著になったわけです。

※マネーポスト2013年春号

関連キーワード

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン