ビジネス

楽天・三木谷氏 新経連で「安倍招致」に成功し存在感高める

 薬のインターネット販売、ネット選挙解禁に向けた動き、そして行政手続きのペーパーレス・オンライン化……。いま、ネット業界に吹く追い風に乗って、発言力を増しているのが、楽天会長兼社長の三木谷浩史氏。政府の産業競争力会議の民間議員も務める。

「(日本企業が)技術で勝ってもビジネスで負けるのは結合力で負けているため。そこで、ネットによる新結合でどういうことが起きるのか、政府にも提言していきたい」

 4月16日、自身が立ち上げた新経済連盟が主催するシンポジウム「新経連サミット2013」でも、国の経済政策にネット活用指針を盛り込むよう力強く訴えた。

 同シンポジウムには、グーグルやスカイプなど米IT企業の首脳陣や、日本からはLINE、グリー社長など今をときめくメンバーがパネリストに招かれた。前夜祭には安倍首相も駆け付け、「2011年に脱退した日本経団連に、自分の立ち上げた新団体のプレゼンスを知らしめることができた」(全国紙記者)と、評価はうなぎのぼりの印象を受ける。

 その一方で、こんな声も聞こえてくる。『月刊BOSS』編集長の河野圭祐氏がいう。

「産業競争力会議では、TPPや正社員の解雇制度に対してもさらなる自由化で競争力を高めるべきだと踏み込んだ発言をしていますが、ときに反発も大きい。また、新経済連盟が国にそこまで影響力を持つ政策提言集団になれるかどうかの真価が問われるのは、むしろこれからだと思います」

 財界人きっての規制緩和論者として名を上げる三木谷氏だが、肝心の本業についても存在感を高めている。主力のネット通販事業が伸び、2012年12月期の決算で715億円と過去最高益を記録するなど、業績拡大は目覚ましい。

 ITに特化した専門紙『東京IT新聞』編集長の西村健太郎氏の解説。

「これまでは単にネットを使ってモノを売るEC(電子商取引)事業者だったのが、最近は電子書籍のkoboを買収したり、第二のフェイスブックと言われたSNSのピンタレストに出資したりと、総合ネット会社になってきたイメージがあります。株式市況の好転もあって、楽天カードや証券、生命保険など付随する金融事業も好調です。今後、知らないうちに三木谷氏の掲げる『楽天経済圏』(循環型サービス)に呑み込まれていくユーザーも増えるのではないでしょうか」

 この勢いのまま、三木谷氏率いる楽天が狙うのはグローバル事業の拡大、中でも世界最大のネット通販事業「アマゾン」への対抗心は並々ならぬものがある。社内公用語を英語に統一したのも、ネット流通業の主戦場が世界各国に広がっていることを意味する。

 いまのところ、世界ではアマゾンに太刀打ちできない「楽天市場」だが、果たして日本流の“仮想商店街”がどこまで海外で受け入れられるのか。

「日本では全国津々浦々に営業マンを配して、小さなEC事業者に『こうしたら売れる、こんな商品を作りましょう』と、人の繋がりでモノを売るきめ細かなコンサルティングで成功しました。そのやり方が海外でどこまで通用するかは、現地採用を含めた人材の育成にかかっています。かつて中国から撤退して辛酸をなめた経験もあるだけに、一筋縄ではいかないのは重々承知のうえだと思います」(前出・西村氏)

 英語教育の高度化、解雇の自由化など三木谷氏が公に発信する政策の行き着く先々には、楽天の収益拡大の「受け皿」が用意され、社員に発破をかける材料にもなっているというわけだ。

関連キーワード

トピックス

実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン