ビジネス

拡大するネット通販を取り込んだヤマト運輸「その日に配送」

「『注文したその日のうちに届ける』なんて、オーバースペックだよ。利用者は現状に満足しているから必要ない」

 ヤマト運輸法人営業部係長であり、「BtoC EC Account Executive」という外資系企業のような肩書を有する滝澤志匡氏が、営業先の通信販売事業者から同じ言葉で断わられ続けたのは2009年秋。ほんの3年半前のことだった(BtoC ECとは消費者向けネット通販の意)。

 ところが今、「当日お届け」はネット通販でもテレビ通販でも当たり前のサービスになってきた。「オーバースペック」と思われていたことが一般化し、生活者のライフスタイルまで変わりつつある。

 それを具現化させたのは、ヤマトが開発し提供する「TSS(Today Shopping Service)」だ。消費者がネットから注文を入れると、エリアによっては最短4時間で商品を届けられる。

 理由のひとつは「商品は最初からヤマトの倉庫にある」からである。ヤマトの物流ターミナル内にある最新自動倉庫に、通販事業者が扱う商品在庫をあらかじめストックしておく。注文が入ればすぐに梱包して発送し、宅急便のネットワークに乗せて「当日お届け」する。業界唯一のスタイルだ。

 滝澤氏が説明する。

「ネット通販業界では、20時~26時(午前2時)をゴールデンタイムと呼びます。帰宅した会社員などが、一息入れてPCを開き買い物を楽しむ時間帯です。TSSを使えば24時に注文して翌日午前に届けられるエリアもある。例えば、詰め替え用化粧品など“すぐに欲しい”という欲求に応じられるのです」

 自動倉庫はグループのヤマトロジスティクスが運営し24時間稼働。ストックされる商品は売れ筋がメインだ。通販事業者は倉庫を持つ必要がなくなり、特に中小の事業者にはメリットが多い。

「小さなロットでも扱えて、スピードが速い。商品保管業務から解放され、マーケティングやコンテンツ製作に集中できる。消費者と事業者、双方のニーズを追求したソリューションです」と滝澤氏。TSSは現在、「エリアごとに展開しているが、将来は東京の事業者様の商品を中部や関西へ当日配送できるサービスを始めたい」(武藤忠雄・法人営業部課長)という。

 アマゾンなど自前で倉庫を持つ大手に対しては、ヤマトの倉庫は使わず従来からの集荷・配送ネットワークをより効率的に活用することでTSSを提供している。スピードを武器に、大手ネット通販ではライバルの佐川急便からヤマトへのくら替えが起きているという。通販の世界で「当日」「即日」といった謳い文句が増えた背景にはTSSの存在があるのだ。

取材・文/永井隆と本誌編集部

※SAPIO2013年5月

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン