ビジネス

中川翔子激賞アプリ製作者「ぐんまが売れると思わなかった」

G(グンマー)を貯めて日本を征服

「ぐんまのやぼう」というゲームアプリがある。群馬県の特産品、こんにゃく、ネギ、キャベツを収穫してG(グンマー)を貯め、日本を、世界、そして宇宙、さらには銀河を群馬県が制圧するというゲームだ。昨年5月にリリースされた直後から評判を呼び、タレントの中川翔子もブログで「これおもしろしゃすwwwww」と紹介した。あっという間にダウンロード数は50万を超え、いまは100万を超えている。その「ぐんまのやぼう」を制作したRucKyGAMESこと本間和明さんに、もうすぐリリース一周年をむかえる「ぐんまのやぼう」について語ってもらった。

 * * *
――群馬県をモチーフにゲームアプリを開発した理由は何だったのでしょうか?

RucKyGAMES(以下R):1年以上前に、ネットでつながる知人たちと、それぞれご当地アプリを作りましょうという話が持ち上がっていたんです。栃木や埼玉のアプリは出ていて、自分は出身地の群馬をやりますと言ったのになかなか作らなかった。仲間の盛り上がりがピークを過ぎたころに作り始めたのが「ぐんまのやぼう」(※以下、「ぐんま」)です。

――最初から、群馬県が日本を征服するゲームにしようと思っていたのですか?

R:あの形には、気づいたらなっていました。最初は、前橋市などの形からこれは何市の形かとあてさせるゲームを考えていました。いまの「ぐんま」のミニゲーム部分です。群馬県人でもよく知らないこと、群馬県知識の押しつけみたいなゲームにしたかった。

――群馬県出身の人はご当地かるた「上毛かるた」を子供のころにやっていて、競技会のために暗記しているから、群馬県知識が豊富だという印象がありますが。

R:なかば義務教育レベルで教わるので「上毛かるた」だけ詳しいんです。40枚以上ある札のうち、「鶴舞う形の群馬県」くらいは言えますけど、全部は覚えてないです。

 本当は「上毛かるた」をゲームのネタにしたかった。でも、会社に勤めていたときに知ったのですが、管理している団体さんがゲームにするのは断っているそうなんです。上毛かるた以外だと、草津は有名でも群馬とイメージがつながらない。じゃあ、もう強引にでっちあげて、よくわからないものを作っちゃおうと決めました。

――「ぐんま」の反響が大きいことに気付いたのは、リリースからどのくらい経ってからですか?

R:5月3日にiPhone版を出してすぐ、翌日ぐらいです。ゲーム内で他の県を制圧すると、ツイッターで「栃木県は群馬県になりました」と投稿できるのですが、その投稿が広がっていく様子が見えました。開発途中に、その表現が面白いと思いついただけなんですが、うまくはまりましたね。

――最初からヒットを狙って「ぐんま」をつくったのでしょうか?

R:売れるとは思ってなかった。一発ネタで、知り合いに遊ばれて終わりかなと予想していました。でも、ダウンロード数よりツイッターでのつぶやかれた数が異常なほどだったので、人気なだとわかりました。あわててAndroid版も制作して5月6日にリリースしたら、さらにドーンと人気が出た。

――Android版へも広げようと思ったのはどうしてでしょうか?

R:自分自身は、それより前からAndroidは持っていたんですけど、iPhoneと比べるとタッチパネルの反応が悪すぎて、アプリを作る気が起きなかった。でも、今はまともに動くし、ドコモからはAndroidしか端末が発売されないから、もう見逃せないですね。

――iPhoneだけでなくAndroid向けにもリリースした影響は大きいですか?

R:「ぐんま」に関してはAndroid版のほうが売れています。記事で取り上げてくれた上毛新聞の人も、Android版で気づいたと言っていました。群馬では、ソフトバンクが繋がりにくい。実家は2階建てなんですが、2階だとソフトバンクの電波がかろうじて入りますが、1階は圏外なんです。群馬はドコモの電波が一番良いので、Android版を出さなかったら、県庁から声をかけられたり、観光特使を任命されることはなかった思います。

――ゲームにはご当地キャラクターの「ぐんまちゃん」もすごろくで登場します。このミニゲームはどんな経緯で追加されたのでしょうか。

R:「ぐんま」が話題になって、上毛新聞に取り上げられたら県庁に呼ばれました。群馬をほめてもいないけれど、揶揄もしていないから良いバランスだったんでしょう。そのとき、「ぐんまちゃん」をゲーム内で使ってほしいと言われ、強引に「すごろく」をひねり出したんです。ぐんまちゃんがテレビで話題になると、ついでにアプリも紹介してもらえるので、便乗できてありがたいですね。

――アプリをリリースする側にとって、話題になることの影響は大きいのですね。

R:便乗でもよいので目立って存在を知ってもらわないと、ダウンロードされないですから。「ぐんま」をリリースしたころにコンプガチャ騒動があったので、その話題に乗ろうとガチャのミニゲームも追加しました。だから、ソーシャルゲームっぽくしたくて、ガチャの画面だけRucKyGAMESの唯一の社員であるグラフィッカーに描いてもらいました。

――これからの群馬県には、どのようになってほしいと期待していますか?

R:群馬県には、もっと有名になってほしいですね。でも、中途半端はよくない。知名度だって思い切って47位のほうが、ありがたいんです。これからも、北関東でよくわからない存在という良い位置でいてほしいです。

――周囲の県というのは、気になるものですか?

R:関東は東京がナンバーワンで、神奈川、埼玉、千葉という上位グループがある。この3つにはかなわない。残る栃木、茨城、群馬の3県で、うちが一番上だという争いが続いていますね。茨城は海があるので、調子に乗っています。茨城は、たぶん、群馬や栃木と争っている意識があんまりないんですよ。勝ってると思ってる。

 群馬には湖と山はあります。あと、尾瀬がある。新幹線も通るので、栃木には勝ってると思ってるんです。ただ、栃木にも日光などの名所があるので、判断が難しい部分がある。それに、漫才師のU字工事さんを見てもわかりますが、はっきり訛っている。あのぐらいのほうがおもしろいんですよね。群馬にはそこまで特徴がない。だから、群馬県が話題になるということそのものが、うれしいんです。

■本間和明(ほんま かずあき) 株式会社RucKyGAMES代表取締役。1984年生まれ。群馬県吉岡町出身。ぐんま観光特使。専門学校を卒業後、ニンテンドーDS向けゲーム開発に携わったのち、2010年に独立。2012年5月にリリースしたスマートフォン向けゲームアプリ「ぐんまのやぼう」が評判を呼び、2012年の「グーグル」検索ワードの都道府県別急上昇ランキングで群馬県を3位に押し上げた。リリースしたスマートフォン向けアプリは合計100本を超えたところ。最新作は「バハムート&ポーカー」(iPhone、Android対応)。著書に『大手メーカーが作らない「B級」iPhoneゲームが売れる50の理由』(秀和システム)

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン