ビジネス

外貨預金 手数料面で「一般の銀行利用する理由なし」と作家

外貨預金1万ドルを取引した場合の手数料と実質利益

 資産運用や人生設計についての多数の著書を持つ作家・橘玲氏が、世界経済の見えない構造的問題を読み解く『マネーポスト』の連載「セカイの仕組み」。アベノミクスが最悪シナリオに向かった場合、財政破綻も想定されるが、それに備える金融商品の例を、橘氏が解説する。

 * * *
 円安で利益を生む投資戦略で誰もが真っ先に思い浮かべるのが外貨預金や証券会社の外貨MMFだろう。最近ではネット銀行を利用して外貨を売買するひとも増えてきた。

 外貨預金をする際のポイントは、為替手数料に敏感になることだ。ここに掲載した図表は1ドル=90円のときに90万円を1万ドルに両替し、1ドル=100円の円安になったので円に戻した際の、金融機関別の手数料と実質利益を表わしたものだ。

 グロス(名目)利益は10万円だが、金融機関によってネット(純)利益が大きく異なることがわかるだろう。これを見ると一目瞭然だが、ネット銀行の為替手数料率が大幅に下がったことで、特別な理由がないかぎり、一般の銀行で外貨預金(両替)をする理由はなくなった(ただし、ネット銀行では海外送金できない)。

 外貨投資のポイントはどの通貨を保有するかだろうが、長期的には金利のちがいは為替の変動で帳消しになって損も得もなくなるはずなので、金利の高い通貨を選ぶことには意味がない。

 世界金融危機以降、ドル、ポンド、ユーロなどの主要通貨の金利が軒並み下がったため、いまや高金利通貨は豪ドル、ニュージーランドドルか、ブラジルレアル、トルコリラなどの新興国通貨だけになってしまった。こうした流通量の少ないマイナー通貨は、米ドルに比べて為替手数料がかなり割高なことにも注意が必要だ。

 通貨の価値は相対的なものだから、すべての通貨が一斉に価値を失うことはあり得ない。基軸通貨は米ドルなので、日本円といっしょに米ドルも下落する(ユーロやポンドだけが一方的に上昇する)シナリオは考えにくく、円安による円資産の価値の減少に保険をかけるとしたら、為替コストの安い米ドルを保有するのが第一選択肢になるだろう。

【プロフィール】
●たちばな・あきら:1959年生まれ。作家。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』など著書多数。財政破綻に備える資産運用の詳細は新刊『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』を参照。

(連載「セカイの仕組み」より抜粋)

※マネーポスト2013年春号

関連キーワード

関連記事

トピックス

今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・イメージ 写真はいずれも当該の店舗、販売されている味噌汁ではありません)
《「すき家」ネズミ混入味噌汁その後》「また同じようなトラブルが起きるのでは…」と現役クルーが懸念する理由 広報担当者は「売上は前年を上回る水準で推移」と回答
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン