ビジネス

TPP交渉参加 農協支配から脱却し農家が活路見出すチャンス

 TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉参加にあたり、日本の農業が破壊されると反対派は主張する。しかし、反対派が本当に守りたいのは日本の農業ではない。

「役所と既得権団体である農協が日本の農業を補助金漬けで支配しているだけ」と話すのは、政策工房社長の原英史氏だ。

 * * *
 農協支配から抜け出し、自力で活路を見出す農家が増えれば、TPP交渉参加はむしろチャンスと捉えられる。日本の農産品を輸出していく可能性も広がろう。

 農業コンサルタントとして各地を飛び回る岡本重明氏をはじめ、地力のある農業者にはTPP推進の立場を取る人が少なくない。

 ただ、岡本氏は「日本のおいしいコメなら輸出できるはず。TPP参加で儲かる農業に変わる」といった単純な論法にも批判的だ。むしろいかに付加価値をつけるかが重要であり、そのために「六次産業化」が鍵になるとする。

 例えば、日本のコメは現状では一俵(60kg)あたり1万3000円程度。これを海外のコメと比較して、どこまで競争できる水準に引き下げられるか、というのがTPPの議論ではよく争点になる。

 ところが岡本氏に言わせれば、コメがおにぎりになった途端、価格水準は全く変わる。

 コンビニなどで売っている1個100円程度のおにぎりはコメの量にすると約40g。コメの値段にしたら10円に満たない。具材代が別途かかるにせよ、10円程度で最終商品が作れるとなれば、価格競争力は一気に上がる。

 原材料の状態でそのまま売るだけでは農業者の利益は小さい。加工して付加価値を高めて販売する「六次産業化」が日本の農業の活路となり得るというわけだ。他にも観光農園を作って産地に人を呼び寄せる、産地レストランを作ってその場で調理して提供する……といった試みにも可能性がある。

 最近では農林水産省も「六次産業化」を唱え、補助金制度を色々と用意している。だが、本当に必要なのは補助金ではない。官の干渉をなくし規制を緩和することだ。例えば現在の農地法では、農地の中に加工施設やレストランなどを作ることが制約される。「農地は農業以外に使うな」ということだ。だが現実には荒野と化している耕作放棄地が山ほどある。

 こうした点を正し、知恵を出せば新しいチャレンジができる環境を作らない限り、補助金など役に立たない。

※SAPIO2013年5月号

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン