ビジネス

女性の「ぺたんこ靴」好調 武装するアラフォーの意識も変化

「靴を見れば、いまの私の気分がわかるわ」

 これは、5月11日より公開される映画『私が靴を愛するわけ』のなかの一節。クリスチャン・ルブタン、マノロ・ブラニク、ピエール・アルディなど高級靴のデザイナーたちが登場し、靴の魅力に迫るドキュメンタリー映画だ。映画の主役はハイヒール。だが、いま街に出れば、フラットシューズと呼ばれる、いわゆる“ぺたんこ靴”が流行している。フラットシューズを選ぶ女性たちの気分とは――。

 大規模改装を経て3月6日にグランドオープンした伊勢丹新宿本店。3月の売上高は前年比116.3%を計上するなど、リモデルの効果が早速出ている。婦人靴売り場も刷新され、売り場面積も拡大した。なかでも好調なのが、フラットシューズだという。

「昨年くらいから、急激に伸びています」(30代店員)

 買い物中の30代女性は言う。

「これまでは、やっぱりヒールのない靴は不安というか、スタイルが悪く見えるので心配でしたが、梨花さんとか、紗栄子さんとかがブログで紹介していて、可愛いなと。流行っていますし、一度自分も履いてみたいと思うようになりました」

 人気ブロガーには、ママさん芸能人が少なくない。彼女たちの生活スタイルも、広く女性たちに影響を与えているようだ。

 こうした流行に合わせて、各ブランドも品ぞろえを強化している。従来は、バレエシューズと言われる、先の丸いカジュアルな靴が多かったが、最近はデザインも多彩になり、用途ごとに使い分ける女性も増えているという。前出の店員は言う。

「パンプス型のオペラシューズ、紳士用革靴のデザインを取り入れた“おじ靴”と呼ばれるタイプ、靴ひものないスニーカーの形のスリッポンなど、フラットシューズとひと言で言っても、種類が豊富になりました。カジュアルからビジネスシーンまで使えます」

 靴市場をめぐる状況は、厳しい状況が続いている。2012年度の国内靴・履物小売市場規模は、前年度比99.4%の1兆3,145億円と予測されており、2008年から5期連続で減少(矢野経済研究所調べ)。そんな中、「歩きやすい靴、長時間歩いても疲れない靴、いわば履き心地の良い靴」を求める動きが広がっているという。首都圏を中心に、東日本大震災で帰宅困難な状況を経験した人が多くいたことに加え、近年のランニングブームなども影響していると、矢野経済研究所は分析している。

 とはいえ、ラクなだけでは、女性の気分はアガらない。フラットシューズには、最近の女性たちの価値観が投影されていると語るのは、ライフスタイルジャーナリストの吉野ユリ子氏だ。

「バブルの名残のあるアラフォー世代には、靴は痛くても頑張って履くのが当たり前、という風潮がありました。靴は自分を武装するもので、高いヒールで颯爽と歩くのが、カッコいい女だったんですね。いまも、高いヒール靴には需要があります。ですが時代も変わり、自然でいることのほうが、こなれているという価値観も出てきました。ヒールを履いて背を高く見せたり、足を長く見せるよりも、身の程を知っているほうがカッコいいと考える女性も、特に若い世代を中心に増えているのです。フラットシューズは、文字通り“地に足の着いた”靴。そういった価値観にぴったりくるのではないでしょうか」

 加えて、女性たちの健康志向も影響しているようだ。

「最近、骨盤矯正などが流行っています。頑張って高いヒールを履いても、歩いている姿が美しくなかったり、腰を悪くしては、意味がない。履き心地がよく、体にもよい靴を履くのが、本来あるべき姿であり、正しい自然の姿だと考える人が増えています。とはいえ、頑張ってヒールを履きたいシーンもあるでしょう。パーティーにはヒールを、週末にはフラットシューズをと、オンとオフの使い分けもうまくなってきたといえます」

 靴の流行は変われども、靴と女性の深い関係には、変わりがないようだ。

関連記事

トピックス

“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン