ライフ

本屋大賞受賞作 自信失った人に知って欲しい日本人の生き様

 百田尚樹氏は1956年生まれの作家。長年、放送作家として活躍し、2006年に『永遠の0』(太田出版刊、後に講談社文庫)で小説家デビュー。同作品は累計200万部を超すベストセラーとなった。『海賊と呼ばれた男』(講談社刊)は、4月9日、全国書店員が選んだ  いちばん!売りたい本 2013年本屋大賞」を受賞した。

──受賞をどう感じたか。

百田:投票する書店員の方は6対4で女性が多いと聞いていました。だからなのか、これまでの受賞作は女性読者の好みそうな、いい意味で甘い感じの作品が多かったような気がします。でも、僕の本は石油の世界を舞台に、戦後日本の復興に人生をかけた男たちを描いた歴史経済小説。そういうガチガチの硬派な作品が受賞したのでびっくりしました。

 僕は自信を失っている今の日本人に、作品の主人公、国岡鐵造のモデルとなった出光興産の創業者、出光佐三(1885~1981)をはじめとする当時の日本人の生き様を伝えたいと思ってこの作品を書きました。そんな風に使命感を持って書いたのはこの作品が初めてです。読者に一番近い文学賞を受賞できたのは、きっと書店員の方たちにも、“この生き様を今の日本人に知ってもらいたい”と思っていただけたからではないでしょうか。

──“当時の日本人の生き様”とは、具体的にはどんなものか。

百田:たとえば、僕の親父は大正12年(1923年)生まれで、家が貧しかったので、高等小学校を卒業すると働きながら夜間中学に通い、その後兵隊に行き、戦後はさまざまな職業を転々としました。そして、30歳ぐらいの時に大阪市の水道局に臨時職員として採用されて、何年か後に正規職員になれました。

 勤めていたのは漏水課という部署で、一年中、真夏の炎天下も真冬の北風が吹き荒ぶ日も、水道管が破損している場所に行ってはスコップとツルハシで道路を掘り返し、水道管を直す。その仕事を定年まで続けました。単調でシンドイ仕事だったと思いますが、戦後の復興を支えた世代はみんな同じように頑張ったのだと思います。

※SAPIO2013年6月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

巨人を引退した長野久義、妻でテレビ朝日アナウンサーの下平さやか(左・時事通信フォト)
《結婚10年目に引退》巨人・長野久義、12歳年上妻のテレ朝・下平さやかアナが明かしていた夫への“不満” 「写真を断られて」
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
バスツアーを完遂したイボニー・ブルー(インスタグラムより)
《新入生をターゲットに…》「60人くらいと寝た」金髪美人インフルエンサー(26)、イギリスの大学めぐるバスツアーの海外進出に意欲
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
ハワイ島の高級住宅開発を巡る訴訟で提訴された大谷翔平(時事通信フォト)
《テレビをつけたら大谷翔平》年間150億円…高騰し続ける大谷のCMスポンサー料、国内外で狙われる「真美子さんCM出演」の現実度
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
焼酎とウイスキーはロックかストレートのみで飲むスタイル
《松本の不動産王として悠々自適》「銃弾5発を浴びて生還」テコンドー協会“最強のボス”金原昇氏が語る壮絶半生と知られざる教育者の素顔
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン