ビジネス

対内投資なく雇用が減る異常な日本の景気を大前研一氏が酷評

 安倍晋三首相の「アベノミクス」に、日銀の黒田東彦総裁による「黒田バズーカ」が日本経済を活気づけていると言われている。ところが、これら「アベクロバブル」は遠からず終わりを迎えると大前研一氏は断じる。その理由とは?

 * * *
 安倍首相が根本的に理解していないのは、日本経済の低迷は構造的な問題である、ということだ。

 この20年間の日本の直接投資残高を見ると、対外投資(日本企業による海外への直接投資)は急増しているが、対内投資(海外の企業による日本への直接投資)はほとんど増えず、2011年末時点で対外投資(約9650億ドル)が対内投資(約2260億ドル)の4.3倍に達している。つまり、日本企業が海外投資を拡大する一方で、海外からは全く投資(すなわち雇用)を呼び込めていないのである。

 ところが、欧米先進国やNIEs(新興工業経済地域)を見ると、大半の国は対外投資と対内投資のバランスがとれている。隣に中国や東欧といった巨大な投資対象がある台湾やドイツなどを除くと、いずれも海外に対するのと同規模の投資を呼び込んでおり、シンガポールや香港では対内投資が対外投資を上回っている。どの国も対外投資を進めると同時に対内投資にも注力して海外から投資を呼び込んでいるのだ。

 企業が海外に出て行っているのに海外から投資を呼び込めていない日本は、当然ながら国内の産業が空洞化し、雇用は流出するばかりで創出されていない。

 実際、国内就業人口は1990年代後半から減少し、近年は6300万人前後になっている。これも主要国では日本だけである。他の国は製造業の就業者数が減っても、それ以上に非製造業の就業者数を増やしている。対内投資がなくて雇用が減っている異常な国・日本の景気が良くなるわけがないだろう。

※週刊ポスト2013年5月24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

6月6日から公開されている映画『国宝』(インスタグラムより)
【吉沢亮の演技が絶賛】歌舞伎映画『国宝』はなぜ東宝の配給なのか 松竹は「回答する立場にはございません」としつつ、「盛況となりますよう期待しております」と異例の回答
NEWSポストセブン
さいたま市大宮区のマンション内で人骨が見つかった
《さいたま市頭蓋骨殺人》「マンションに警官や鑑識が出入りして…」頭蓋骨7年間保管の齋藤純容疑者の自宅で起きた“ある異変”「遺体を捨てたゴミ捨て場はすごく目立つ場所」
NEWSポストセブン
大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン