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世界最速高校生・桐生祥秀の速さの秘密を為末大ら専門家が分析

 日本人初の夢の9秒台までわずか0.02秒。4月29日、高校生として現役世界最速の記録を叩き出して一躍時の人になった桐生祥秀クン(京都・洛南高校3年)だが、いまその周囲がにわかに騒がしくなっている。

 まずはこの世界記録、レースで国際陸連指定の超音波式風向風速計を使用していなかったために公認されない可能性があるという。これは一大事とばかりに、日本陸連は急遽、桐生クンが出場する大会に国際基準を満たす設備、装置を用意する異例の対応を決めた。高校レベルの大会が一気に国際レベルに格上げされたようなものだ。

 まさしく彗星のごとく現われた天才高校生。9秒台の壁を軽々と突破しそうなその走りの秘密はどこにあるのか。多くのアスリートを指導してきた筑波大学大学院スポーツ医学専攻・白木仁教授が解説する。

「どんなランナーも80mからはスピードが落ちますが、彼はその落ち方が小さい。体に力を入れる『オン』と力を抜く『オフ』の使い方がうまいからです」

 80m付近のスプリントフォームの連続写真を見るとよくわかるが、白木教授によると、着地する前の左脚太腿は「オフ」で筋肉は見られないが、着地直前では筋肉が隆起して「オン」になっているという。この「オン」「オフ」の切り替えを猛烈なスピードでタイミングよく繰り返すことができるのは限られたトップアスリートだけだという。

 400m障害でシドニー、アテネ、北京の五輪3大会連続出場を果たした為末大氏は、体の上下動が少ない点がスピードを生み出していると指摘する。

「耳の位置と後ろに写る競技場の壁の線に注目すると、頭がほとんど上下していないことがわかります。これを可能にしているのはエネルギーをすべて前方向に変えて走れる技術です。桐生クンくらいの年齢ではもう少し体が上下するので、ガタガタした走りになります。

 しかし、彼は毎秒5回ほどの回転数とスムーズな動きで滑るように走っています。普通この動きはトップクラスの選手が身につけているもの。17歳ですでに体得しているのですから、天性の才能といえます」

※週刊ポスト2013年5月31日号

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