「水曜日ですか?週に1度のノー残業デーということで、皆さん会社から家にまっすぐお帰りのようで、空いてますね」。高野さんは、常連客を冷やかすようにそう言いながら、彼らに好評の人懐っこい笑顔で角打ち劇場を見渡す。
店の歴史は、この場所から目と鼻の先の東陽3丁目で昭和42年から始まっている。「何もないところから始めたんです。角打ちもやってました。うちの人はよく働いたんですよ。頑張りすぎで、早くに亡くなっちゃったのよ」と、未亡人・マサ枝さん(69)が、残念そうに語る先代が起こした酒屋は、平成になってこのビルに移ってきて、10数年が経過した。
25人ほどが同時に飲める広さがある角打ちスペースは、元々は酒類倉庫だったという。そのためか、表側の酒屋エリアを通り抜けた奥に位置している。
「会社からの帰り道にありましてね。外から覗くと、奥で飲んでいるのが見えるわけですよ。でも、入るにはちょっと勇気がいる。この感じ、わかってもらえます? 3年前に、思い切って飛び込んだんです。あんまりつきあいのうまいほうじゃなかったんだけど、今じゃここで知り合った異業種サラリーマン仲間がいっぱいで、楽しい人生です。行動する勇気の大切さを教えられた店といえるかな」(40代IT系)