ビジネス

先進国では数回転職も当たり前「40歳定年制」に賛成の提言も

「65歳定年制」は必ずしも働く者の味方となる制度ではない。経営コンサルタントの深田和範氏が、働き方をよりよく変える“逆説の処方箋”として「40歳定年制」を提案する。

* * *
 65歳までの継続雇用の義務化は、年金支給開始年齢引き上げとセットの施策だが、根本的におかしい。公的年金の問題は国が解決すべきであり、今回の法改正は60~65歳の間の所得保障の責任を国が企業に押し付けただけである。

 そうした施策が出てきてしまうのは、「年金をもらい始めるまで同じ会社に所属し続けるのが望ましい」とする考えに日本人がとらわれてしまっているからではないか。本当は、年齢に関係なく自分の能力が十分に発揮できる場所で働けたほうがいいはずだ。

「40歳定年制」は昨年夏、政府の国家戦略会議フロンティア分科会で東京大学大学院教授の柳川範之氏が提言した施策である。

<必ずしも一生を一つの会社で過ごすのではなく、環境や能力の変化に応じて20~40歳、40~60歳、60~75歳と三つの期間でそれぞれに合った活躍できる働き場所を見つけ、元気なうちは全ての国民が活き活きと働く社会となる>というものだ。

「40歳定年となれば失業者が溢れる」と批判されがちだが、言わんとすることは的を射ているし、一つの処方箋になる。

 競争力のある他の先進国では長い人生で数回転職することが当たり前だ。そうした社会を目指すために、定年を40歳くらいまで引き下げてもいいのではないか。

 まず、働く側の意識を変えることにつながる。同じ会社に「所属し続けること」を重視する考え方から、起業や転職など個人の責任でライフプラン(キャリアプラン)を考えるべき時代がやってきた。企業が労働者を守ってはくれない厳しい時代なのだから、企業に依存し過ぎてはいけないのは当然だ。

 もちろん40歳でいきなり失業者になれ、という極端な話ではない。提唱者の柳川氏が述べているように、「40歳定年制を導入した企業に対して定年後1~2年程度は収入の補填を義務づけ、社員の再教育機会を担保する」といったことも必要だろう。

 30~40代は、働き手として脂が乗っている時期であると同時に、子育てのためにお金や時間を割かなければならない時期と重なる。そうしたケアは必要だ。

 また、40歳で今後の仕事に必要なスキルを学び直すことにより、一生働ける力を身につけられる。「40歳定年制」は企業が若い世代を使い捨てにする制度ではなく、個人を成長させ長く活躍できるようにするための仕組みである。

※SAPIO2013年6月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
『東方シンデレラ』オーディション出身者の魅力を山田美保子さんが語ります
《第1回グランプリは沢口靖子》浜辺美波、上白石姉妹、長澤まさみ…輝き続ける『東宝シンデレラ』オーディション出身者たちは「強さも兼ね備えている」
女性セブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
9月6日から8日の3日間、新潟県に滞在された愛子さま(写真は9月11日、秋篠宮妃紀子さまにお祝いのあいさつをするため、秋篠宮邸のある赤坂御用地に入られる様子・時事通信フォト)
《ますます雅子さまに似て…》愛子さま「あえて眉山を作らずハの字に落ちる眉」「頬の高い位置にピンクのチーク」専門家が単独公務でのメイクを絶賛 気品漂う“大人の横顔”
NEWSポストセブン
川崎市に住む岡崎彩咲陽さん(当時20)の遺体が、元交際相手の白井秀征被告(28)の自宅から見つかってからおよそ4か月
「骨盤とか、遺骨がまだ全部見つかっていないの」岡崎彩咲陽さんの親族が語った “冷めることのない怒り”「(警察は)遺族の質問に一切答えなかった」【川崎ストーカー殺人】
NEWSポストセブン
シーズンオフをゆったりと過ごすはずの別荘は訴訟騒動となっている(時事通信フォト)
《真美子さんとの屋外プール時間も》大谷翔平のハワイ別荘騒動で…失われ続ける愛妻との「思い出の場所」
NEWSポストセブン
選手会長としてリーグ優勝に導いた中野拓夢(時事通信フォト)
《3歳年上のインスタグラマー妻》阪神・中野拓夢の活躍支えた“姑直伝の芋煮”…日本シリーズに向けて深まる夫婦の絆
NEWSポストセブン
学校側は寮内で何が起こったか説明する様子は無かったという
《前寮長が生徒3人への傷害容疑で書類送検》「今日中に殺すからな」ゴルフの名門・沖学園に激震、被害生徒らがコメント「厳罰を受けてほしい」
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン
『東京2025世界陸上』でスペシャルアンバサダーを務める織田裕二
《テレビ関係者が熱視線》『世界陸上』再登板で変わる織田裕二、バラエティで見せる“嘘がないリアクション” 『踊る』続編も控え、再注目の存在に 
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《ベビーカーショットの初孫に初コメント》小室圭さんは「あなたにふさわしい人」…秋篠宮妃紀子さまが”木香薔薇”に隠した眞子さんへのメッセージ 圭さんは「あなたにふさわしい人」
NEWSポストセブン
海外から違法サプリメントを持ち込んだ疑いにかけられている新浪剛史氏(時事通信フォト)
《新浪剛史氏は潔白を主張》 “違法サプリ”送った「知人女性」の素性「国民的女優も通うマッサージ店を経営」「水素水コラムを40回近く連載」 警察は捜査を継続中
NEWSポストセブン