ビジネス

大暴落の日に株価17%上昇企業「突然上昇、社員もビックリ」

 株式市場が暴落に見舞われようとも「上がる株」は必ず存在する。日経平均株価が1143円安を記録した5月23日の「暗黒の木曜日」。東証1部に上場する1712銘柄のうち、実に1691銘柄もが雪崩を打つように下落したが、なかには逆行高を演じた銘柄もあった。

 その数、わずかに17社。いったいどんな企業だったのか──。

 日経平均が7.32%の急落に見舞われるなか、1位の協栄産業は前日比32円高の16.58%の上昇率を記録。2位の丸栄は12.84%増、3位のエスケイジャパンは8.03%増と、いずれも日経平均の下落率を上回る伸びを見せている。

 一見したところ、あまり知名度が高いとはいえない銘柄が目立つが、カブ知恵代表の藤井英敏氏は次のように分析する。

「時価総額の低い銘柄ばかりで、買いたい投資家が多少いたからたまたま上昇したといえるでしょう。特に目新しい買い材料も見当たらず、上位の銘柄でもすでに下がっていますし、下位の銘柄の上昇率は1%にも満たない。ましてや6位の小野薬品工業や10位のTOWAなどは東証との重複上場でメインは大証ですから、そもそも外国人投資家の影響は受けにくい。たまたま上がっていた銘柄にデイトレーダーなどの短期筋が飛びついたということでしょう」

 とはいえ、全体の98%もの銘柄が下落したなかでの上昇は評価に値するはずだ。玉川大学経営学部教授・島義夫氏も、こんな見方をする。

「いずれの銘柄も割安感があったと思えますが、一言でいえば『小型株効果』です。時価総額が低い小型株は大型株よりもリターン率が高くなりやすいという傾向があるわけです」

 古くからいわれる相場格言に「野中の一本杉」というものがある。これは全体が下落している時に逆行して上昇する銘柄を一本杉にたとえたもので、暴落相場では一際目立つという意味だ。

「デイトレーダーなどは買い材料など考えずに、チャートで強い銘柄に目をつけて買いに入る。つまり、上がっているから買うわけです。たとえば2位の丸栄は仕手筋が絡んでいるとの噂も飛び交い、その後もストップ高が続くなど連日の大商いで、暴落後の1週間で株価が一時倍増するほどの続伸となっています。また、4位のフルキャストホールディングスは直近の高値から急落していたので、リバウンド狙いの買いが入ったと見て間違いないでしょう」(前出・藤井氏)

 いわばデイトレの“おもちゃ”と化した格好だというのだ。当の企業にも聞いてみた。上昇率1位の協栄産業は半導体や電子機器などを手がける商社。総務部の担当者に率直な感想を尋ねると、「あんなふうに突然上がる根拠がどこにあるのか。社員もビックリ」と投資家よりも驚いている様子で、こう続けた。

「大きな業績改善につながるような材料があって株価が上がったのならとても嬉しかったんですけど、そんな理由も思い当たらず、ウチの実態にはそぐわないと感じていました。むしろ、こんなことでご迷惑をかけるようなことがあっては困ると社員はみな思っていたんじゃないでしょうか。あの日はストップ高近くまで上がりましたが、今は元の水準くらいまで戻っていますし……」

 確かに、同社の株価推移を見ると、翌24日には16円安、週が明けてからも下落が続き、すっかり「暗黒の木曜日」前の水準に戻ってしまっている。

※週刊ポスト2013年6月14日号

関連キーワード

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン