スポーツ

松木安太郎氏が「ループシュート」を擬音で表現した深い理由

 サッカー日本代表は、4日のオーストラリア戦に1対1で引き分け、5大会連続5回目のW杯出場を決めた。この試合でテレビ視聴者盛り上げたのは、テレビ朝日で解説を担当した松木安太郎氏だ。この日も、松木氏は視聴者の気持ちを代弁するかのごとく、チャンスやピンチの場面になると、「おおー!」「あー!」などとテンション高く放送し、視聴者の盛り上がりを後押しした。

 一見すると、ただ叫んでいるだけと勘違いされがちな松木氏の解説だが、実は視聴者に対しての細かな気配りがあるという。象徴的だったのは後半13分。香川真司がループ気味にシュートを放つと、松木氏はこう解説した。

「ふわっと、いったね。ゴールキーパー1番・シュウォーツァー、大きいからね。ふわっと越すような」

 普通の解説者であれば、「ループシュート」と専門用語を使いたくなるが、「普段サッカーを観ない人にもわかりやすく」をモットーとしている松木氏は『ふわっと』という擬音で表現。『ふわっと越すようなシュート』であれば、老若男女誰が聞いてもわかるだろう。

 その他、視聴者と選手の共通項を発見させるために、時折サッカーと関係のない情報を盛り込むのも、松木氏の解説の特徴だ。この日も、DF今野泰幸のプレーを見て、「今野は宮城の星っていわれてます」と宮城出身であることをさりげなく伝え、同郷の視聴者に感情移入させやすくするなどのテクニックを駆使している。

 こうした松木氏の解説は、「視聴率低迷が続くプロ野球中継の解説とは好対照」とテレビ局関係者は語る。

「最近の野球中継は、野球好きのための情報しか流さなくなっている。たとえば、『得点圏打率3割5分』といわれても、野球に詳しくない人は何をもって得点圏とするのかわからない。最近の中継では『このコースの打率は4割』などとあまりにもデータが細か過ぎて、マニア向けの傾向が強い。『興味のない人は見なくていい』という意見もあるかもしれませんが、それは人気低下に拍車をかけるだけ。

 一方、少しでもサッカーに興味のある人ならわかるような『ループシュート』という用語でさえ使わない松木さんの解説は、普段サッカーを観ない視聴者にとって、とてもやさしい。日本人なら誰でも知っている『ふわっと』という擬音を使うあたり、解説者としての力量とセンスを感じますね」

 また、後半4分、サイドでの1対1を止めたDF内田篤人に対し、「いいね! 内田! 日本の6番内田!」とサッカーに詳しくない人にもわかるように、『背番号6=内田』と画面を通じて、顔と名前を一致させる解説をしているのも、松木氏の解説の特徴。選手の名前を呼ぶときに、背番号も一緒に紹介することで、やはり、視聴者にとってやさしい解説を心がけているのだ。

 この試合は、今年1位となる視聴率38.6%を記録した。こうした松木氏の「一見さんを掴む解説」が、サッカー日本代表のテレビ中継の高視聴率につながっているのかもしれない。

関連記事

トピックス

大谷の母・加代子さん(左)と妻・真美子さん(右)
《大谷翔平を魅了》結婚相手・真美子さんの手料理は「お店のようなクオリティ」母・加代子さんの想いを受け継ぐ「温かな食卓の原風景」
NEWSポストセブン
ドジャースの公式Xより
ドジャース山本由伸が韓国遠征で「ジャージー×400万円バーキン」ファッション、なぜ野球選手は“ブランド好き”? かつては「ヴィトン×金ネックレス」が定番
NEWSポストセブン
板東英二のオフィシャルWEBサイトより
《吉田羊が連呼!》板東英二の“ふてほど”出演はあるか? “消息不明”の近況は…仕事オファーも断っている状況、“野球界のレジェンド扱い”も固辞か
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)と妻の田中真美子さん(レッドウェーブ公式サイトより)
大谷翔平の結婚相手・田中真美子さん、抜群の好感度でメディア出演待望論 モデル、キャスター、インフルエンサーなど幅広い分野での存在感に注目
NEWSポストセブン
活動は今年10月で一区切り“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(84)
《右耳聴覚も失っていた》“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(84)が語った「活動は今年10月で一区切り」と「叶えたい夢」
NEWSポストセブン
3月5日に「ガスト」店内と思われる場所で撮影された”調味料一気飲み”の動画が拡散された
《ガストで調味料一気飲み》迷惑動画を撮影・SNS拡散の3人がついに全員謝罪も運営会社は「厳正な対処」を継続方針
NEWSポストセブン
大谷翔平(Getty Images)と妻の田中真美子さん(レッドウェーブ公式サイトより)
【彼女はめっちゃ甘え上手】大谷翔平の結婚相手・田中真美子さん、大学同窓生が明かす素顔「チャラ男は好きじゃない」
NEWSポストセブン
元横綱・白鵬の周りでは様々なトラブルが…
元白鵬・宮城野親方に関する「暴行告発状」“白鵬米”販売会で写真撮影をめぐるトラブル「取り巻きが市議にヘッドロック」証言
週刊ポスト
miwaと萩野公介(時事通信フォト)
【おしどり夫婦に何が】金メダリスト萩野公介がmiwaと電撃離婚「夫が家を出た」夫婦で大学院進学もすれ違いの日々か miwaがファンクライブサイトで発表
NEWSポストセブン
羽生と並んで写真に収まる末延さん(写真はSNSより)
【全文公開】羽生結弦のアイスショーとバイオリニスト元妻のディナーショー、公演日程が丸かぶり 「なぜ同じ日に?」と関係者困惑
女性セブン
話題になっているジャッキー・チェンの近影(微博より)
《ジャッキー・チェンの現在》今年70歳になる大スターの近影に中華圏で驚きの声あがる「ちょっと急に老けすぎでは」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)と妻の田中真美子さん(レッドウェーブ公式サイトより)
《お披露目》大谷翔平の結婚相手・田中真美子さんの好きなタイプは「ゴリマッチョ」敬愛する兄は巨漢ラガーマンの高身長ファミリー
NEWSポストセブン