スポーツ

統一球 言い訳せず世間の反発を抑えたミズノの謝罪力は高い

「統一球」問題で揺れるプロ野球。コミッショナーなNPBの無責任な姿勢に批判が集まる中、大人力コラムニスト、石原壮一郎氏はミズノの「大人の対応」に注目する。

 * * *
 日本のプロ野球が、交流戦の話題そっちのけで「統一球問題」で揺れています。今シーズンから公式戦で使うボールの反発係数をこっそり高めて、飛びやすい仕様にしていたことが、6月11日に発覚しました。「混乱を避けるために」という口実で変更を内緒にしていた日本野球機構(NPB)の隠ぺい体質や、組織のトップなのに「私は知らなかった」と言い放った加藤良三コミッショナーの無責任っぷりが非難を浴びています。

 NPBとしては、変更を発表したら「2年前に飛ばないボールに変えたのが間違いだったことになって、その責任を問われたら嫌だなあ……」というお役所臭い発想がベースにあったのは明らか。コミッショナーがそう思ったのか、周囲がコミッショナーに気をつかって余計な配慮をしたのか、そのへんはわかりません。ところが、結果的にはあっさりバレて、ご覧のように大混乱を引き起こしてしまいました。まったくトホホな話です。

 今回の騒動で注目したいのが、統一球を一手に製造し、NPBから「変更したことは内緒にしておくように」と指示されていたミズノ社の対応。ひとつ間違えれば「NPBと結託して選手やファンを騙した悪者」にされかねない立場なのに、今のところ「NPBに命令されて悪事の片棒を担がされた被害者」というイメージでとらえられています。

 世間からの“反発係数”を最小限に抑えることができたのは、問題が発覚したときに大人力を発揮した謝り方ができたから。記者会見では同社の取締役が「命懸けで戦う選手、ファンの皆さまを欺く形となり申し訳ない」と頭を下げ、変更の事実を公表しなかったことについても「申し訳ない対応をしてしまった」と潔く謝罪しました。

 もし、このときに「指示されて不本意ながら内緒にしていた」「自分たちの立場としては逆らえなかった」といったニュアンスを匂わせて、NPBに責任をなすりつけようとしている姿勢を少しでも見せていたら、風向きは大きく変わっていたでしょう。

 そういう本音をあえて口にしなかったことで、見ている側は「まあ、ミズノにしてみたら仕方ないよな」と寛大な気持ちになることができます。しかも、NPBに恩を売ったことにもなって、長い目で見ればきっといいこともあるでしょう。臆面もなく「私は知らなかった」と言って火に油を注いだ加藤コミッショナーとは、まさに対照的です。

 どういう仕事でも、今回のミズノのような立場に追い込まれることがないとは言えません。そんなときはミズノを見習って、言い訳をしたい誘惑を全力で振り切り、ちょっとサービスして余分に謝っておくのが、同情や理解や信頼を得る近道。キャバクラに行ったことが妻にバレた場合も、「○○に誘われたから」と言いたい気持ちを抑えて素直に謝りましょう。そんな姿を見て、妻も「まあ、仕方ないわね」と思ってくれる……はずです。

関連記事

トピックス

山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン