ライフ

大学の講義評価 ヘイトスピーチ的な内容もあると講師が告白

 授業の教え方・内容が適切かどうか、学生に評価させる「講義評価」という制度が広く行われている。しかし匿名をいいことに、評価ではない単なる中傷を書き連ねる学生もいるとか。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が体験を語る。

 * * *
「大学の講義評価で、“クソババア、死ね”と書かれた」

 地方私大の女性教授の証言です。大学には講義評価というものがあります。学生に対して講義の満足度、指導が適切か、改善点などを聞くものです。その講義評価にこんなコメントが掲載されていたとか。これはたいていの場合、匿名で回収され、大学の職員が集計し、教員に渡すものなのですが。こんなコメントを書く学生も問題ですし、それをそのまま渡す職員もどうかと思います。ほとんどヘイトスピーチじゃないですか。もちろん、こんなコメントが出てくるということは、講義の進め方、教え方に問題があった可能性も無きにしもあらずですが。

 ちなみに、その女性教授は「以前、こんなコメントを書いてきた学生がいましたが、クソババアにも、生きる権利はあります」と講義で主張。その大学で武勇伝として語り継がれたのだとか。

 私は、院生であり、大学の非常勤講師でもあります。中年にして、講義評価をする側でもあり、される側でもありますが、率直に、これほどの茶番はないかと思っています。これはちゃんと、機能しているのかと。

 まず、文系の院生が受ける講義は10人以内の人数少なめのものが多く、匿名で書いたとしても、誰が書いたのか特定されやすいのですよね。そもそも、院生を指導する際は、教授のポリシーというものがありますので、意見が反映しづらいですし。

 それ以上に不愉快なのは、講師として評価される際です。前提として、私も講師としての指導力を高めたいですし、どんな小さなことでも言ってほしいと思っています。でも、批判のポイントがあまりにずれていて、やる気をなくすことがよくあります。

 過去、最高に不愉快だったのは、講義が微妙に伸びたことがありました。講義が伸びるということは、他の講義への移動時間が短くなるなど、学生にも迷惑をかける行為なので、よくないことはわかっています。でも、ほんの数分ですよ。これに対して、「講義が伸びたせいでアルバイトに遅刻してしまった。なんとかしてほしい」なんていうコメントが書かれ、それがそのまま私に渡されるという。講義が伸びたことは批判を受けるべきですが、そういう脱力するような自分の都合を書くなよ、と。

 他にも誹謗中傷に限りなく近いもの、それ、ポイントじゃないだろと思うものもいっぱいです。「マイクが聞こえにくい」など大学の設備に対する怒りを私にぶつけられたこともありましたね。

 また、学生というのは実にデリケートなもので、良かれと思って伝えたメッセージが裏目に出ることもあります。私はこれまでいくつかの女子大で教えてきたのですが、ここは構造的に世間知らずになりがちなので、珍しく意識高く「社会の動きをちゃんとキャッチするように」「視野を広げるために、旅行でかまわないから海外に行ってみよう」などと伝えたところ、「もう二度と女子大で教えないでほしい」「海外に行かない奴はバカ、みたいなことを言うな」というような批判コメントも。複雑な心境になりました。いや、自分は良かれと思って言ったのですけどね。伝え方に気をつけないといけなかったなと反省するわけですが。

 そして、最近では講義評価で出た批判に対して改善点を大学に申告する制度もあるわけですが、あまりに脱力する改善点というか批判に対して、改善しますと言うのは茶番ではないでしょうか。いや、面白い講義はちゃんと評価されているようですよ。ただ、結局、単位が取りやすく、先生が優しい(というか、甘い)講義が人気が出るわけです。

 ここから真面目な話をしたいと思います。大学は、学生はこの講義評価をまともに機能させようと思っているのでしょうか。機能させるためには。そもそも講義評価の意味や、どういう視点で書くかを学生に伝えるべきです。現状では特に説明もされず、単なる満足度アンケートとなっているように思います。書かれる内容も建設的ではないので、教員たちもスルーするだけです。

 また、いくら匿名とはいえ、書いてはいけないことはあります。それをそのまま渡す大学もどうかと思います。大学には、この世のものとは思えないくらいつまらない講義、やる気のない先生というものが存在するわけで、教育の質を高めるための講義評価は大切だと総論では思うのですが、問題はやり方です。正しいレビューの仕方を学生に教えるべきではないでしょうか。こういう話をすると「学生はそこまでバカじゃない」「学生をバカにするな」という話になりますが、実際、単にヘイトスピーチ的な内容を匿名で書くアンケートは教員のやる気を削ぐだけで何も生み出さないと思うのです。

 講義評価に限らず、学生にはレビューリテラシーを身につけさせるべきだと感じる今日このごろです。レベルの低い評価をしていると、自分もますますバカになりますからね。

 そんな不満を講義評価を控えた7月中旬に叫んでみます。さあ、今回はどんなコメントが飛び出すやら。

トピックス

国際ジャーナリスト・落合信彦氏
【訃報】国際ジャーナリスト・落合信彦氏が死去、84歳 独自の視点で国際政治・諜報の世界を活写 
NEWSポストセブン
元日に結婚を発表した女優の長澤まさみ(時事通信フォト)
長澤まさみ「カナダ同伴」を決断させた「大親友女優」の存在…『SHOGUN』監督夫との新婚生活は“最高の環境”
NEWSポストセブン
薬物で急死した中国人インフルエンサー紅紅(左)と交際相手の林子晨容疑者(右)(インスタグラムより)
「口に靴下を詰め、カーテンで手を縛り付けて…」「意識不明の姿をハイ状態で撮影」中国人美女インフルエンサー(26)が薬物で急死、交際相手の男の“謎めいた行動”
NEWSポストセブン
晩餐会に出席した真美子さんと大谷(提供:soya0801_mlb)
《真美子さんとアイコンタクトで微笑み合って》大谷翔平夫妻がファンを驚かせた晩餐会での“サイレント入退場”「トイレかなと思ったら帰っていた」
NEWSポストセブン
畠山愛理と鈴木誠也(本人のinstagram/時事通信)
《シカゴの牛角で庶民派ディナーも》鈴木誠也が畠山愛理の肩を抱き寄せて…「温かいご飯を食べてほしい」愛妻が明かした献身性、広告関係者は「大谷&真美子に引けを取らないパワーカップル」と絶賛
NEWSポストセブン
最新情勢をもとに東京の30選挙区の当落を予測した(時事通信フォト)
【2・8総選挙「東京1〜10区」の最新情勢】公明の連立離脱で現職閣僚が落選危機か 自民の優勢が伝えられるなか中道の前職がリードする選挙区も
NEWSポストセブン
第74回関東東海花の展覧会を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2026年1月30日、撮影/JMPA)
《雪の精のよう》佳子さま、ゴールドが映える全身ホワイトコーデに上がる賞賛の声 白の種類を変えてメリハリを出すテクニック
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせインフルエンサー、ボニー・ブルー(TikTokより)
《あなたが私を妊娠させるまで…》“12時間で1000人以上と関係を持った”金髪美女インフルエンサー(26)が企画を延期した真相に「気色悪い」と批判殺到
NEWSポストセブン
イラク出身のナディア・ムラドさん(EPA=時事)
《ISISに囚われた女性が告発》「お前たちは “奴隷” になるためにいる」「殴られ、唾を吐きかけられ、タバコの火で焼かれた」拉致された末の“生き地獄”の日々とは
NEWSポストセブン
ハナ被告の相次ぐ麻薬関連の容疑は大いに世間を騒がせた(Instagramより。現在は削除済み)
《性接待&ドラッグ密売の“第2の拠点”をカンボジアで計画か》韓国“財閥一族のミルク姫”が逮捕、芸能界の大スキャンダル「バーニング・サン事件」との関連も指摘
NEWSポストセブン
アワードディナーに初めて出席した真美子さん(提供:soya0801_mlb)
《鎖骨見せワンショルで“別人級”》大谷翔平の妻・真美子さん、晩餐会ファッションで見せたジャパン推しの“バランス感覚”【専門家が解説】
NEWSポストセブン
サンシャインシティ文化会館を訪問された佳子さま(2026年1月30日、撮影/JMPA)
《メイク研究が垣間見える》佳子さま、“しっかりめ”の眉が印象的 自然なグラデーションを出す描き方、ナチュラルなアイシャドウやリップでバランスも
NEWSポストセブン