ビジネス

開発において企画書ない任天堂「存在しない新しいモノ」目指す

「ファミリーコンピュータ」(1983年発売、6191万台)、「ゲームボーイ」(1989年発売、1億1869万台)、「ニンテンドーDS」(2004年発売、1億5387万台)、「Wii」(2006年、9984万台)と常にゲーム業界を牽引してきた任天堂。その任天堂の“モノづくり”の形について、ジャーナリストの永井隆氏がリポートする。

 * * *
 任天堂ではどんな形で“モノづくり”が行なわれているのか。同社は、「ゲームボーイ」などを手がけた故・横井軍平氏や、現専務でマリオシリーズの生みの親でもある宮本茂氏といった名物プロデューサーを生んだことでも知られる。

「ソフト開発において、当社には企画書がない。最初は2~3人がアイデアを持ち寄って、実際にプログラムを書いて“プロトタイプ”のゲームを作っていくのです。それが認められると増員され、少しずつ形になっていく。最終的にチームは30~50人。大型タイトルでは70人ほどになります」(任天堂関係者)

 一般的な日本のメーカーでは、発売時期や希望小売価格の目安、概要、予想コスト、人員規模などを記した企画書を作り、稟議されて開発が始まる。これに対して任天堂では、開発の自由度を縛ることもある企画書そのものがない。こんなゲームを作りたい、という社員が実際に試作して、面白ければゴーサインが出る。

 ただし、目指すゲームは「世の中に存在しない新しいモノ」という“掟”がある。横井氏はかつて部下の結婚式で次のような挨拶をしたという。

「無から有をつくることは大変です。奥様には、これを理解していただきたい。しかし、新しいことをやるというのは楽しいのです」

 山内溥(ひろし)・前社長は社長時代、新作ゲームができてくると「これのどこが新しいんや」と問うことが多かったそうだ。新しさがなければ、発売日まで固まっていた案件を、その場で容赦なくボツにした。逆に10人中9人が反対しても、「これは世の中にありません」と訴えるものに対しては背中を押した。

 任天堂の中堅幹部が語る。

「ウチには“カイゼン”という考え方がありません。新しいモノしかつくらないからです。また、社是、社訓、社歌の類もありません。行動や考え方を縛ることをしない会社なのです。

 開発チームの権限は大きく、社長でさえ口を挟めないことは多い。(1996年発売の)『NINTENDO64』など売れなかったゲーム機も多くあるが、失敗できるからこそ挑戦できるという風土がある」

※SAPIO2013年8月号

関連記事

トピックス

石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《24歳の誕生日写真公開》愛子さま、ラオス訪問の準備進めるお姿 ハイネックにVネックを合わせて顔まわりをすっきりした印象に
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
韓国・漢拏山国立公園を訪れいてた中黒人観光客のマナーに批判が殺到した(漢拏山国立公園のHPより)
《スタバで焼酎&チキンも物議》中国人観光客が韓国の世界遺産で排泄行為…“衝撃の写真”が拡散 専門家は衛生文化の影響を指摘「IKEAのゴミ箱でする姿も見ました」
NEWSポストセブン
 チャリティー上映会に天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが出席された(2025年11月27日、撮影/JMPA)
《板垣李光人と同級生トークも》愛子さま、アニメ映画『ペリリュー』上映会に グレーのセットアップでメンズライクコーデで魅せた
NEWSポストセブン
リ・グァンホ容疑者
《拷問動画で主犯格逮捕》“闇バイト”をした韓国の大学生が拷問でショック死「電気ショックや殴打」「全身がアザだらけで真っ黒に」…リ・グァンホ容疑者の“壮絶犯罪手口”
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン
ガーリーなファッションに注目が集まっている秋篠宮妃の紀子さま(時事通信フォト)
《ただの女性アナファッションではない》紀子さま「アラ還でもハート柄」の“技あり”ガーリースーツの着こなし、若き日は“ナマズの婚約指輪”のオーダーしたオシャレ上級者
NEWSポストセブン
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン