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日韓戦で旭日旗を振った男性 「試合に勝ったので後悔ない」

7月28日、ソウルの蚕室スタジアムでおこなわれたサッカー東アジア杯の男子日韓戦において、日本側のサポーターが旭日旗を振ったことが、日韓双方で騒動になっている。この旗を振っていたのは、横浜F・マリノスの熱心なサポーターである、ハンドルネーム「しなり」氏(35)だ。なぜ国際試合の、しかも日韓戦で旭日旗を振ったのか。しなり氏に話を聞いた。

 彼が横浜F・マリノスのサポーターになったのは2001年頃。地元が横浜で、当時は川口能活や松田直樹など、スター選手が多数在籍していたことが理由だ。その後はずっとマリノスのサポーターを続けながら、日本代表の応援にも駆けつける日々を送っていた。

そんなしなり氏の心に火がついたのは2010年、サッカーの日韓戦で韓国サポーターが伊藤博文を殺害した安重根の横断幕を掲げたのがきっかけだった。

「これは日本チームに対する挑発のアピールだと思いました。でもその時は意味がよくわからなくて(苦笑)。家に帰って誰なのかを調べたんです」(しなり氏)

 しなり氏は「サッカーサポーターの理屈は“やられたらやりかえす”。これはJリーグの試合なら当たり前のこと。だからいつか韓国側に対して、何かしてやろうと思っていた」そうだが、以降アウェイで日韓戦を観戦する機会を持てず、たまたま巡ってきたチャンスが7月28日の試合だったそうだ。

 ではなぜ、「仕返し」のために旭日旗を振ったのか。旭日旗は戦前には軍旗として使われ、戦後は自衛隊旗・自衛艦旗として使われていることなどから、「日本の帝国主義の象徴」として韓国では忌み嫌う人も多い。現在でも「在日特権を許さない市民の会(在特会)」をはじめとする自称愛国者団体による、排外デモ時のアピールに利用されることがよくある。

だが、自らを「無学で無教養。歴史や政治に対してはあまり関心がないし、熱心に勉強したこともないノンポリ」と語るしなり氏は、旭日旗に関しては「自衛隊の海外における、災害救助の場面で映っているのをテレビで見た程度。悪いイメージはなかった」と自己の認識を語り、韓国人の旭日旗に対するアレルギーについては、不勉強であるがゆえに「戦争を知らない若い世代には、薄くなっているのではないかという思いしかなかった」と語った。

つまり政治的・歴史的なアピールではなく、「旭日旗を振ることで韓国側が動揺し、結果、日本チームに有利な空気が作れるのではないか」という思いしかなかったという。だから一部サイトで「新大久保で排外デモのカウンターを続ける集団、『レイシストをしばき隊』の一員ではないか」「どこかの政治団体に頼まれたのではないか」と指摘されていることに対しては、辟易しているそうだ。

「自分は誰かに操られているワケではないし、日本チームがアウェイの雰囲気に飲まれてしまわないように、応援したい気持ちだけで振った。スタジアムで観戦すればわかることだが、Jリーグの応援は、かなり過激なものがある。それをよく知らない人に政治的な解釈を勝手にされてしまうことは、とても不本意」(しなり氏)

しなり氏自身は「レイシストをしばき隊」の一員ではない。しかし新大久保での排外デモに反対する、カウンター活動には参加したことはある。そのことについては「差別に抗議の声をあげるのは当たり前」としながらも、一方で後悔する思いがあるそうだ。それは「思想に偏りがあるのではないかと勝手に解釈されたり、そのことでマリノスや、自分以外のマリノスサポーターに迷惑がかかってしまっては、本当に申し訳ない」と考えているからだ。

 そして今回、旭日旗を振ったことに対しては、後悔の気持ちはないとも語った。

「実は韓国側が挑発してくるのを待っていたのですが、全然その兆しがなくて。だから先にあげてしまいました。するとすぐあちらも、豊臣秀吉の朝鮮出兵で戦った李舜臣と安重根の肖像が描かれた横断幕を掲げてきて。また自分が旭日旗を振ったことで、韓国のサポーターチームの『プルグンアンマ(レッドデビル)』が怒って、かなりの人数がスタジアムを出ていってしまった。

それも日本代表が勝った理由の一つになったのではないか。アウェイの日韓戦におけるプレッシャーは、すさまじいものがある。それに負けないよう、秘策で士気をアップさせるのもサポーターの役割。旭日旗はその、「秘策のひとつ」に過ぎなかったと思っている。決して政治的な意味合いはないし、結果として勝てたので、後悔はしていない」(しなり氏)

 だが、心残りもある。それは試合前にスタジアムの外で日の丸を振っていた彼に対し、プルグンアンマのメンバーから「その旗、カッコいいな」などと気さくに話しかけられ、メールの交換をしていたが、気が引けて連絡できなくなってしまったことだ。

またスタジアムでは旭日旗こそ没収されたものの、力づくで制止されたり殴られたりすることもなく、その後日章旗に付け替えて応援を続けたが、誰もとがめなかったこと、試合後もトラブルなどはなく無事日本に帰国できたことなど、韓国側の対応がソフトだったことにも驚かされた。ボコボコにされる覚悟を持っていたのに、試合終了後に話をした韓国人女性をはじめ、怒る人もいなかったそうだ。

決して韓国や韓国人に恨みがあったワケではなく、サッカーを愛する気持ちだけで起こした行動だった。だが帰国後に友人達から激しく注意されたことなどを踏まえ、今後日韓戦や日中戦で旭日旗を振ることは、控えたいと語った。

なお没収された旭日旗は、しなり氏自身が赤と白のナイロンタフタ製の布を切り合わせて、ミシンがけして作ったもの。製作所要時間は約20時間で、タテ3.5メートル、横4.5メートルのサイズ。布代は全部で約5000円だったそうだ。

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