ビジネス

ガソリン価格「2020年に100円以下の可能性もある」と専門家

 お盆休みのUターンラッシュが始まり、ガソリンの残量を気にしながら渋滞の高速道路を運転しているドライバーも多いはず。そんなイライラをさらに増幅させる発表があった。ガソリン価格が6週連続で値上がりし、1リットル当たり160円20銭となったのだ。

「最近は満タンにすることはほとんどなく、20~30リッターと細かく給油して値段が下がるのを待っていたのですが……。このまま価格が上がり続けるなら、家族とのドライブ旅行も近場で済ませるしかありませんね」(40代会社員)

 2000年代前半に100円を割っていた時期もあったことを考えれば、消費者にとっては大きな痛手である。いま、なぜここまで高騰しているのか。和光大学経済経営学部教授の岩間剛一氏(専攻は資源エネルギー論)に聞いてみた。

「ひとつは原油価格そのものが上昇しているからです。エジプトで軍事クーデターがあったり、隣国シリアの内戦が長期化したりと産油国の中東で地政学的リスクが高まり、原油価格の押し上げ要因になっています。

 もうひとつは、アベノミクスの関係で円安が進展していることが挙げられます。エネルギー業界はほぼ全量を海外からドル建てで輸入しているので、支払い額が増えている。中東リスクと円安のダブルパンチで160円を超えているのです」

 さらに、1年でもっともガソリンの消費量が多いお盆期間、しかも今年は猛暑ゆえにガソリンスタンドを運営する小売業者も強気の価格設定をしているという。

「お盆期間で遠出のマイカー需要が増えるうえに、猛暑でエアコンをかけるから燃費が悪くなりガソリンの消費量が増える。また、乗用車だけでなくアイスや生鮮食品を運ぶトラック用の軽油販売も増えているので、輸入額の増加分を価格転嫁しやすい環境にあるのです」(前出・岩間氏)

 しかし、ガソリンスタンドの経営は決して安泰とはいえない。1994年のピーク時に6万か所あったスタンドは、激しい過当競争にまみれた結果、4万か所以下にまで減った。ハイブリッド車などの普及でガソリン需要が減ったことも経営悪化の要因だ。純粋な価格転嫁以上に値上げすることは、これからも厳しい経営判断となる。

 では、気になる今後のガソリン価格はどう推移していくのだろうか。

「短期的にみれば、中東情勢に解決の糸口が見えないことで160円台の半ばまで上がって高止まりすることは十分に考えられます。もし、イスラエルがイランの核施設を攻撃するなんて緊急事態が発生すれば、180円台まで上昇してもおかしくはありません」(岩間氏)

 かつてガソリンの最高価格は1979年の第二次石油ショック時と、2008年のリーマンショックによる投機マネーの原油市場流入と、2度にわたり180円台まで上昇した。ただ、現在の原油市場の相場から見ると、そこまで高騰することは考えにくいという。

 むしろ、中長期的には大幅に原油価格が下がってくるとの見方もあるのだ。

「アメリカのシェールガス革命が10年、20年にわたって世界に波及すれば、シェールオイルという非在来型の石油の生産量も増えてくるので、原油価格は再び下がってくるかもしれません。既にアメリカではそんな見通しから燃費の悪いSUV車や大型のピックアップトラックが売れています。

 日本国内でも低燃費車の割合が伸びて“ガソリン離れ”が一層加速することと、さらなるスタンドの淘汰で、原油価格の上昇をそう簡単に末端価格に転嫁できない状況は続きます。それらを考え合わせると、2020年ごろに再び100円を割るぐらいまで下がってくることだってあり得る話です」(岩間氏)

 世界情勢と各国のガソリン需要によってまだ乱高下が予想される原油価格。いずれにせよ埋蔵量には限りがある資源だけに、将来的にいつまた高騰してもおかしくないという覚悟はもっておいたほうがよさそうだ。

関連記事

トピックス

”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
クマ対策には様々な制約も(時事通信フォト)
《クマ対策に出動しても「撃てない」自衛隊》唯一の可能性は凶暴化&大量出没した際の“超法規的措置”としての防御出動 「警察官がライフルで駆除」も始動へ
週刊ポスト
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下主催の「茶会」に愛子さまと佳子さまも出席された(2025年11月4日、時事通信フォト)
《同系色で再び“仲良し”コーデ》愛子さまはピンクで優しい印象に 佳子さまはコーラルオレンジで華やかさを演出 
NEWSポストセブン
「高市外交」の舞台裏での仕掛けを紐解く(時事通信フォト)
《台湾代表との会談写真をSNSにアップ》高市早苗首相が仕掛けた中国・習近平主席のメンツを潰す“奇襲攻撃”の裏側 「台湾有事を看過するつもりはない」の姿勢を示す
週刊ポスト
クマ捕獲用の箱わなを扱う自衛隊員の様子(陸上自衛隊秋田駐屯地提供)
クマ対策で出動も「発砲できない」自衛隊 法的制約のほか「訓練していない」「装備がない」という実情 遭遇したら「クマ撃退スプレーか伏せてかわすくらい」
週刊ポスト
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
文京区湯島のマッサージ店で12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕された(左・HPより)
《本物の“カサイ”学ばせます》12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕、湯島・違法マッサージ店の“実態”「(客は)40、50代くらいが多かった」「床にマットレス直置き」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン
Mrs. GREEN APPLEのギター・若井滉斗とNiziUのNINAが熱愛関係であることが報じられた(Xより/時事通信フォト)
《ミセス事務所がグラドルとの二股を否定》NiziU・NINAがミセス・若井の高級マンションへ“足取り軽く”消えた夜の一部始終、各社取材班が集結した裏に「関係者らのNINAへの心配」
NEWSポストセブン
山本由伸(右)の隣を歩く"新恋人”のNiki(TikTokより)
《チラ映り》ドジャース・山本由伸は“大親友”の元カレ…Niki「実直な男性に惹かれるように」直近で起きていた恋愛観の変化【交際継続か】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
NEWSポストセブン